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レイ・イナモト氏がI&CO Tokyoで目指す、戦略・財務も融合する「経営視座のクリエイティブ」とは

ゲスト:I&CO Tokyo レイ・イナモト氏、高宮範有氏、間澤崇氏

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クリエイティブは最後に困ったときの“駆け込み寺”ではない

サービスデザイナー 古澤恵太氏(以下、敬称略):イナモトさんは2019年7月にI&CO Tokyoを開設されましたが、以前はアメリカのデジタル・エージェンシーR/GAを経て、2004年からはAKQAでCCO(クリエイティブ最高責任者)として、世界の名だたる企業のクリエイティブを担当していらっしゃいました。そもそもなぜI&CO を立ち上げられたのでしょうか。

I&CO Founding Partner レイ・イナモト氏(以下、敬称略):2012年あたりから、いろんな業界が過渡期で、分岐点に立っているという感覚があったと思います。広告業界やクリエイティブ業界でも同様の雰囲気がありました。方向性を変える必要があるのではないかと感じたんです。ただ、2012年、2013年頃は方向性が見えてきていたものの、どういった形態がふさわしいのかはわかりませんでした。

 I&COを立ち上げたのは2016年ですが、その数年前から、コンサルとデザイン・ファームやコミュニケーション・エージェンシーの中間にあるような会社、デザインとデータとテクノロジーを掛け合わせて新しい答えを見つけていけるような、プロフェッショナルが集まる会社をつくるという形態が見えてきたんです。

古澤:なぜそういった会社が必要だと考えたのでしょうか。

イナモト:大企業が新しいことをやろうとすると、多くの場合はその事業を始める3年くらい前に戦略コンサルのところに相談に行きます。戦略コンサルの方々は1年くらいかけて戦略面、ビジネス面から分析して膨大な資料を作り、方向性を打ち出します。それをもとに、企業の方はデザイン・ファームに行って、たとえば車の未来とか、旅行の未来などを考えてもらう。そこで出てくるのがコンセプトムービーです。ただし、コンセプトムービーでは、具体的に何をやったらいいかわからない。そこで最後の1年、下手したら半年ぐらいになって予算も時間もなくなった頃に、僕が所属していたようなクリエイティブ・エージェンシーにやってきて、乱暴な言い方をすると「何でもいいからやって」と依頼するんです。これは、あまりに無駄が多いのではないかと感じました。

古澤:事業会社の新規事業の場合、そういった状況は大げさではなく、よくあるそうですね。事業会社の方が戦略面を含めてクリエイティブの方にダイレクトに依頼できるように会社をつくったわけですね。

イナモト:そうなんです。また、2010年ぐらいからデータサイエンティストと組んで仕事をすることが増えました。彼らと仕事をして、デザイン、データ、テクノロジーを掛け合わせることによって新しい突破口が見つけられるのではないかと考えたのも、I&CO立ち上げの理由の一つです。

古澤:イナモトさんは、講演などでも広告業界やクリエイティブ業界が「マス向けからパーソナルへ」「影響を与えることから共感されることへ」「モノを作ることからコトをつくることへ」と変化していると指摘されています。またコミュニケーションだけでなく、さまざまなシーンでクリエイティビティを発揮する場面が増えているともおっしゃっていますね。となると、デザインとテクノロジーの掛け合わせでできることは多そうです。

 そして今回、東京に拠点を開設なさいました。それは何がきっかけだったのでしょうか。

イナモト:今、日本企業の経営者の方々はオリンピック後に何をするかを考えています。そろそろ海外に進出しなければならないとか、デジタル・トランスフォーメーションの必要があるといった理由でよく問い合わせをいただきます。今まではNYと東京を行き来してやっていましたが、案件が多くなって拠点を東京に構える必要を感じていました。そして、高宮と間澤が入ってくれたことで実際に拠点を持つことができました。

レイ・イナモトレイ・イナモト氏
アメリカのデジタル・エージェンシーR/GAを経て、2004年にAKQAに移籍。CCO(クリエイティブ最高責任者)として、グーグル、ナイキ、アウディなど、世界を代表するブランドのデジタルマーケティング戦略とクリエイティブの立案と実行を数多く担当。カンヌ国際広告祭サイバーライオン金賞や、NY・アートディレクターズクラブ金賞など、数々の賞を受賞している。2016年にデザイン・データ・テクノロジーを組み合わせたビジネスを創造する、I&COをNYで設立。2019年7月東京オフィスI&CO Tokyoを開設。

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