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良品計画金井氏に博報堂デザイン永井氏が問う、「デザイン経営」の本質と実践法

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 2018年に経済産業省と特許庁が中心となり、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する「デザイン経営」についてまとめた報告書「『デザイン経営』宣言」が発表された。世界の有力企業が競争力としてデザインを戦略の中心に据えている一方、日本においては「デザイン」という言葉が持つ意味の幅広さもあり、経営と「デザイン」を結び付けられない企業も多い。  そこで、「『デザイン経営』宣言」の策定にも携わったHAKUHODO DESIGN代表の永井一史氏が「デザイン経営」に取り組む経営者を招き、「デザイン」と「デザイン経営」について議論する対談イベント「デザイン経営の実装と実践」を開催した。今回は、株式会社良品計画代表取締役会長兼執行役員の金井政明氏をゲストとし、「世界ブランドをつくる、デザイン哲学のDNA」として語り合った様子を紹介する。

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「『最良の生活者』とは何か」という“問い”から生まれた無印良品

永井一史氏(HAKUHODO DESIGN代表、以下敬称略):「デザイン経営」とは、デザインの力を活用することで、企業の競争力であるブランド力とイノベーション力を高めていく方法です。具体的には、ビジョンを明確にし、それを一貫した企業活動に落とし込んでいき、社会と企業が継続的に良い関係を築いていくこと。そして、デザイン経営の推進にあたっては、人材や育成、評価、組織文化や働き方に至るまで、さまざまなことが関わってきます。つまり、企業活動の中の様々なレイヤーにデザインを組み込むことが非常に大事だと思います。今回、金井会長にはここについてお話を聞いていきたいと思います。まずは無印良品の紹介からお願いいたします。

金井政明氏(良品計画代表取締役会長兼執行役員、以下敬称略):無印良品はセゾングループのオーナーであった堤清二さんらによって1980年に作られました。堤さんは西武百貨店や西友、ファミリーマートなど100社以上を率いる経営者である一方、小説や詩も手掛ける文化人でもありました。その堤さんが、消費社会へのアンチテーゼとして無印良品を作ります。

 堤さんは、人間は欲張りで、人の目を気にする動物だと考えました。そこに消費社会が入ってきたことで、社会が分断され、個人主義になっていると捉えたのです。そこで、無印良品のアートディレクターを務めることになる田中一光さんは、消費社会で人間はどんな暮らし、振る舞いをすべきなのか、「『最良の生活者』とは何か」を問いかけます。無印良品はその問いから生まれました。また、堤さんは “普通の”経営者だけでは無印良品の思想は維持できないと考え、「アドバイザリーボード」を作ります。経営にデザイナーが参画する仕組みを作ったのです。

 現在、原研哉さんがアートディレクターとして、深澤直人さんと須藤玲子さんが商品開発、小池一子さんがコミュニケーション、杉本貴志さんが空間デザインを担っています。杉本さんは2018年に亡くなりましたが、いまだに「杉本さんだったらどうするだろう」と考えることが多いので、現在もメンバーに名を連ねています。これらのメンバーが「『最良の生活者』とは何か」という問いに対して「良い商品」「良い環境」「良い情報」を同軸的にデザインしてくわけです。この「デザイン」は「付加価値」という意味ではなく、「生活の仕方」や「生活の価値」を作る仕事を意味しています。

 そのため、無印良品は、経営も含めた企業活動の思想からデザインが機能しています。加えて、「無印っぽい」「無印っぽくない」というお客様の意見とともに商品を生み出しているので、「無印良品」をお客様との共同作業で作っているともいえます。

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