経営企画担当者に必要となるCVCの基礎知識と実務とは?
筆者はCVCの実務経験の中で、2000年のCVCブームの過熱とリーマンショックによるその終焉を現場で体験してきました。このような得難い経験を、第三期ブームと呼ばれる現在のCVCブームに向き合う、主に事業会社の経営企画・戦略部門の方々に共有できないか。このことが、本コラムを執筆する最大で唯一の動機です。
一昔前は「CVC」と言うと、「コンビニエンスストアの一種?」などと聞き返されていましたが、いつのまにか「CVC」という言葉が定着して、日本ベンチャーキャピタル協会のCVC会員だけでも60社を超えるCVCが存在する時代となりました。その一方で、CVCは過去何度かブームになっては、不景気になり姿を消すことを繰り返しているため、長い業歴を持つCVCが少なく、実際の現場を体験し、知識やノウハウを持っている人がとても少ないのが現状です。
CVCは、一般のVC業務にシナジーを生み出す業務を加えた、裾野が広く奥深い業務であり、十分な知識やノウハウのない状態で取り組むと失敗する可能性が高い事業です。それにも関わらず、ここ数年で設立されたCVCの中には、十分な知識やノウハウが不足するまま運営している会社も見受けられます。そのような会社が増えた結果、数年後にCVCは“うまくいかない手法”というレッテルを貼られ、過去同様、盛り下がって消えてしまうことを危惧しています。
この場を借りて、私の持つVC・事業会社投資、CVC設立・運営などの経験をお伝えして、少しでもCVCの持続的発展のお手伝いができれば幸いです。
本連載は、主に下記内容を基礎知識と実務知識として共有していきます。
- CVCを始める前に必要となる基礎知識(今回)
- VCとCVCの共通点と相違点(第2回)
- CVCとして必要な「投資戦略」と「投資手法」(第3回)
- CVC人材に必要なスキル要件と育成&評価(第4回)
- CVCとして必要な「キャピタルゲイン」と「シナジー」という投資判断(第5回)
- CVCとして必要なシナジー創出のパターン(第6回)
今回は、まずCVC業務を理解する土台作りとして、知っているようで知らない基礎的な知識について、CVC運営の観点から簡単に説明していこうと思います。