オープンイノベーションの成否は、起業家精神の高い人材の有無
山口周氏(独立研究者/著作家/パブリックスピーカー/ライプニッツ代表、以下 敬称略):前編でも少し触れましたが、大企業のイノベーション実現における役割や立ち位置についてお聞きしたいです。
やはり大企業の主流は、スタートアップにシードマネーを出して応援するなり買うなり、というやり方なんでしょうか。最近は大企業でも、ゼロから新しいことを起こそうとして頑張っているところがありますよね。そういうのは筋が悪いということになりますか。
蛯原健氏(リブライトパートナーズ 代表パートナー、以下 敬称略):おっしゃるとおり、オープンイノベーションでやるべきでしょう。大企業は既存のものをぶっ壊すコストが高くて新しいことをやるインセンティブが持ちづらい。失うものが何もないスタートアップがアジャイルに新しいものを作り、テイクオフしていけそうだと思えるぐらいのタイミングから大企業は連携する、あわよくばその後買収する、というのが理屈上は良いはずです。
ただ、現場ですごく痛感するのは、オープンイノベーションという仕組みをうまく使いこなすには大企業の人たちの側も起業家精神が高くないとダメだということです。
山口:使いこなすというのは、買収や投資をしたスタートアップをですか?
蛯原:そうです。例えばトヨタがUberに出資していますが、両社で新規事業を立ち上げよう、というときにはUber側だけではなくトヨタ側にも起業家精神が高い人がたくさんいないと無理ですよね。要するにビジネスプロデューサーのような役割が必要なんです。
大企業にとってはそこが一番難しいところで、やっぱり終身雇用や年功序列というものと起業家精神とは少なからず対立するんです。ビジネスプロデューサー的な人たちは価値が高く、まさにニュータイプとして定義されるような人たちですから、給料も高くして、3年くらい在籍してくれればいい、くらいに割り切らないと仕方ないんじゃないかと思います。その点リクルートは38歳定年制なんて言って「どうぞ辞めてください」というのを相当早い時期からやっている。起業家精神の塊みたいな人たちの会社だからいろいろなところを買収してうまくいくんだと思います。