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旭化成中村氏が語る、日本のIPランドスケープの現在地──最新アンケートが示す「成果」と「課題」とは?

PatentSight Summit 2024レポート Vol.2

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 企業経営を取り巻く環境が大きく変化するなか、特許庁がガイドブックを作成するなど、年々注目度が増しているIPランドスケープ(以下、IPL)。その背景には、経営判断を迅速かつ的確に行うために根拠となる客観的な情報が必要であり、IPLはその判断材料の1つになることや、2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂により、知財投資等の開示が求められるようになったことなどがある。日本でIPLが注目を集め始めたのは2017年。それから7年、日本のIPLの取り組み内容はどう進化したのか。諸外国と比較して何が必要か。2024年7月のパテントサイトサミットで中村栄氏が「『IPインテリジェンス活動のグローバルコラボレーション』〜日本/欧州/韓国におけるIPランドスケープ、その課題と打ち手」と題して行った講演内容を紹介する。

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日本のIPランドスケープの現在地

 特許庁が2021年に日本の大手企業やスタートアップ、大学や研究機関などの1,515組織・団体を対象に行った調査資料[1]において「IPL」とは、「事業戦略又は経営戦略の立案に際し、①事業・経営情報に知財情報を組み込んだ分析を実施し、その分析結果(現状の俯瞰・将来展望等)を②事業責任者・経営者と共有すること」と定義されている。単なる情報分析にとどまらず、それをさまざまな形式に加工して事業責任者や経営者と共有するところがポイントである。

 日本企業がIPLに注目するきっかけとなった1つは、2017年7月17日付け日経新聞「知財分析 経営の中枢に」という新聞記事だと中村氏は語り、その盛り上がりの3年後、2021年当時の状況紹介から講演を始めた。

 冒頭で引用した2021年に行われた特許庁による調査では、2021年の段階でIPLの必要性を感じている企業は76%であった。ところが実際に実施できているところは18%、2割弱に留まっていた。

 IPLの導入・実施の課題になっていたのは、「社長・経営層の説得・理解」「部門間の連携・体制の強化」「人的な繋がり・連携・巻き込みの強化」「知財部員の調査・分析スキルの強化」などである。

 こういった状況を受けて、①事業競争力の強化と知の探索による新たな価値創造を促すことで企業価値を向上すること、②個社のレベルにとどまらず、日本産業界全体として企業価値を向上させることで、日本の持続的な社会発展を促し、広く公益に寄与することを目的に、「IPランドスケープ協議会」が設立された。これが2020年12月のことである。9社の企業が幹事会社となり、会員企業20数社からスタートした協議会は、現在85社にまで成長している。

IPランドスケープ推進協議会と3つの分科会について

 協議会では、IPL標準化分科会、仮想IPL分科会、海外連携分科会という3つの分科会が活動を行っている。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:IPランドスケープ推進協議会/クリックすると拡大します

 「仮想IPL分科会」は実務を通してIPLのスキルを獲得するために作られた推進協議会の中で核となるべき分科会である。もともとIPLは業界での自社の位置を可視化できるツールであった。それが、次第に各社の事業を強くするため・意思決定をするためのツールとなり、現在では産業界で各事業者がつながる共創のためのツールになりつつある。

 しかし議論をしていただけではなかなか腹落ちしないために、一度自分でやってみてスキルを獲得しようということで仮想IPL分科会が誕生した。本分科会では様々な業種の会員メンバーが手法のノウハウを出し合って実際に手を動かしてIPLを実施する。ここで得られた知見はまさに協議会のナレッジとなり、財産となる。

 この蓄積されたナレッジを標準化した型としてまとめるのが「IPL標準化分科会」だ。日本のIPLのスタンダードとして国などに提案していくことを目的としている。

 「海外連携分科会」は、海外企業のIPランドスケープの実態を知り、日本のIPLとの違いを明確することで、IPLのさらなる高度化することを目指して設立された。ゆくゆくはSDGs等の社会課題を対象としたIPL活動の共創・共有を通じて、個社や各国の利益を超えて、グローバルレベルでの活動も考えている。


[1] 特許庁 総務部 企画調査課『「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究」について』(2021年3月)

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フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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