インタビュー 濱口 秀司 連続インタビュー

“樹形図の根本”にイノベーションを興す──濱口秀司氏が語る、組織カルチャーを変革する唯一の方法とは?

monogoto 濱口 秀司氏インタビュー:第6回

 日本初のイントラネット構築やUSBメモリの発明をはじめ、幅広い業種の新規事業開発やイノベーションに携わってきた濱口秀司氏。日本企業におけるイノベーションへの意識変化をポジティブに評価しながらも、その混乱ぶりについて懸念を示す。何が問題なのか、また解決に向けた方策にはどのようなものがあるのか、率直な提言をいただいた。

[公開日]

[語り手] 濱口 秀司 [聞] 栗原 茂(Biz/Zine編集部) [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 長谷川 梓

[タグ] 競争戦略 認知 バイアス ビジネスデザイン

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イノベーションの機運が高まるものの、混乱が続く日本企業の取り組み

──日本企業における新規事業開発がこの数年でどう変わってきたか、まずは濱口さんが感じられていることをお聞かせいただけますか。

monogoto濱口秀司氏(以下、敬称略):新たな事業開発やイノベーションが日本の社会の発展に不可欠であるという認識が、企業組織や個人にも、ようやく浸透してきたように思います。しかし、相当混乱している印象もありますね。世の中には様々な理論やメソッドがあふれ、それに振り回されているからではないでしょうか。

 企業は新規事業開発やイノベーションのためにかなりの時間を費やして、様々な取り組みを行っています。本を読んではメソッドを学んだり、部門からメンバーが集まってワークショップをやったり……、延々とブレストばかりやっているという会社もあるようです。でも、それだけ時間や人材、お金を掛けても、成果に結びついたという話は聞いたことがありません。

 そもそも手法はあくまでツールであり、誰が使っても結果が出せるというものではありません。コンサルティング会社やマーケティング会社に牽引役を委ねる会社もありますが、ほとんどは新規事業開発やイノベーションの実績や経験がないにも関わらず、ただワークショップやブレストを回しているだけということも多いようです。手法を紹介したり意見を整理したりすることはできても、本当に新規開発やイノベーションに必要な部分で、適切なアドバイスや伴走ができていない。

 新規事業開発やイノベーションは、全社に関わる大仕事、経営そのものです。ブレストやワークショップをやって「コンセプトを分厚い資料として作り、去る」というような仕事で実現できるわけがありません。アイディアを検証し実践するためには、商品開発や技術開発、マーケティングや物流など、必要に応じてあらゆるプロセスに関わる必要があります。新規事業が立ち上がってからも、サプライチェーンの改善や投資分析、他事業への横展開を相談されることも少なくありません。ちょっとメソッドをかじっただけ、ましてや社内でブレストするだけで、できるようなものではないのです。

──では、濱口さん自身は企業のイノベーションや新規事業プロジェクトなどにどのように関わっていらっしゃるんですか。

濱口:前述したようなコンサル会社と根本的に違うのは、「全てに関わる」というところでしょうか。基本的に分業はせず、デザイナーなども全て自身のリソースを使います。私がコントロールしやすいというのもありますが、クライアントの社内で情報を共有でき、理解が進みやすいのでモチベーションが全く違うんですよ。プロジェクトの大きさにもよりますが、常に20〜25件ほどのプロジェクトが走っている感じですね。

 最初はあえて事前情報を入手しすぎないように顧客企業と向き合います。その際にまず行うのは、目的を聞き共有することです。ただ、その場合にも注意が必要で、目的を関係者で取り違えていたり、そもそも目的階層が違っていたりする可能性があります。

 日本企業で成果につながらないというのは、ここに原因があるかもしれませんね。そもそも目的がずれているのに、受け身なコンサルだとそこを是正することができない。そもそも目的の階層がずれているのに、ずれたままで解決策を見出そうとしても難しいでしょう。

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