インタビュー 経営参謀としてのCFO

事業撤退に直面したCFOによる事業投資の再配分──バーゲルマンとミンツバーグに学ぶ、創発的戦略とは?

ゲスト:日本CFO協会 主任研究委員 兼 FP&Aプロジェクトリーダー 石橋善一郎氏【後編】

 米国企業では一般的にCFO組織の一部である「FP&A」は、大きな事業転換の場面において事業部長のビジネスパートナーとしてどう寄与すべきか。環境変化により変更を余儀なくされる戦略をどのように形成し、実行をサポートすべきか。インテルの日本法人と米国本社でFP&AとCFO職(日本法人)に就き、インテルの歴史に残る経営判断の場に携わった経験を持つ石橋善一郎氏。後編では、米国本社の事業部コントローラーとして事業撤退の当事者となった際の経験、今後のCFO組織により必要となる、計画的戦略と創発的戦略の融合に関して、事業戦略と財務戦略を高度に統合するCFO組織の理想像を伺った。

[公開日]

[語り手] 石橋 善一郎 [聞] 大塚 寿昭 [取材・構成] 中原 絵里子 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 企業戦略 創発的戦略 財務戦略 4つの統制レバー ラバーバンドモデル

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

事業戦略転換時に、事業部コントローラーとして担った役割

大塚寿昭氏(バリューアップパートナー株式会社代表取締役、以下敬称略):コロナ禍で景気が後退している中、まずはキャッシュを残して生き残らなければならないが、次世代事業の構築に向けた投資もしなければならない。経営参謀であるCFOとして、事業投資の再配分をどのように行っていくのか。現在、そのような経営判断を迫られている企業は多いかと思います。石橋さんのご経験として、インテルではどのように生き残り戦略の判断をされたのか、お話を伺えますか。

石橋善一郎氏(日本CFO協会 主任研究委員兼FP&Aプロジェクトリーダー、以下敬称略):2000年の秋、くしくもインテルが第3四半期の業績下方修正を発表したことでITバブルが崩壊。いわゆるインテルショックが起きた頃で、2001年度の売上高は前年度の約6割、営業利益は赤字寸前の状況でした。

大塚:つまり、赤字寸前の状況の中で利益を担保しながらも、今利益を出している商品が、今後価値がなくなるかもしれないから新たな手を打たなければならない状況だった、ということですね。

石橋:まさにそうです。今後新しい価値を創出してくれる商品の開発が必要ですが、利益を出すためには研究開発費の総額は抑える必要がある。今年黒字を確保しながら、2年後3年後の事業戦略の軸となる商品を開発するためには、優先順位を決める必要があります。現在進行中のプロジェクトが10あるなら、特に優先度の高いものは継続すべきです。一律で10%ずつ投資を削るという判断はありえない。だから優先度の低いプロジェクトを辞めるという判断が必要になります。

 私が当時製品事業部のコントローラーとして担った役割は、研究開発資源を新製品開発プロジェクトに配分するために実行予算によるコントロールを行うこと。具体的には、研究開発費を最も可能性のあるプロジェクトに投資するため、数ある新製品開発プロジェクトに優先順位をつけ、予測キャッシュフローの純現在価値がマイナスになったプロジェクトに対して中止する判断を新製品開発プロジェクトの責任者のビジネスパートナーとして行うことでした。

石橋善一郎日本CFO協会 主任研究委員 兼 FP&Aプロジェクトリーダー 石橋 善一郎氏

バックナンバー