行動経済学を施策に落とし込む「切り口」
今回からは、行動経済学を実務に落とし込むための「切り口」を、マーケティング施策の検討ステップにあわせて以下の5カテゴリーに整理してご紹介していきます。
- 効率よく「好感認知」をつくる
- 新たなニーズを創出する
- 魅力的なものに見せる
- 購入ストレスを低減する
- 自然に継続させる
これらのステップに「26の切り口」を紐づけると、以下の図のようになります。
本コラムではボリュームの関係上「26の切り口」すべてをご紹介することはできないのですが、今回から3回に分けて各カテゴリーで主要となる切り口をご紹介していきます。
1.効率よく「好感認知」をつくる
新たにリリースする予定、もしくはリリース直後の商品・サービスにおける最初の課題は、「いかにして好感認知をとるか」です。今や様々なデジタル施策があり、それらを駆使すれば、ターゲットに対して“認知”をとることは難しくはありません。しかし、あらゆるタッチポイントから膨大な情報が降り注ぐ中では、認知の段階である程度の好感や関心を作らなければ、ターゲットを次のステップに進めることはできません。つまり、認知の“質”を高める工夫が必要だということです。「とりあえず認知させてから」と悠長にやって勝ち残れる時代ではありません。限られた時間とカネを有効に使うためにも、効率よく「好感認知」を作ることが大切です。このカテゴリーから3つの切り口を解説していきます。
ユーザーを広告塔に(活用理論:バンドワゴン効果)
これは、生活者がその商品/サービスを利⽤すればするほど、その事実がユーザーの周囲に自然に知られていく仕組みを作るという方法です。
わかりやすい事例としては、Hotmail(MSNが提供していたWebメールサービス。現在は、後継サービスに移行し終了)の黎明期における取り組みでしょう。Hotmailのユーザーが未利用者にメールを送信すると、「あなたもこの『フリーメール』を使いませんか?」という文章が受信したメール下部に自動的に表示されるという仕組みが実装されていました。これが功を奏し、Hotmailはユーザー数の劇的な増加に成功しました。
この方法のベースにある行動経済学の理論は「バンドワゴン効果」です。人気を集めていたり売れているものがあったりすると、元々関心が無かったにも関わらず興味を示してしまう傾向を指します。このアプローチは、ユーザーの増加傾向を可視化することで、好感認知の獲得につなげることを狙います。
「自分に近い人の多くがその商品/サービスのユーザーになっている」という事実は気になるものです。様々な広告手法はあっても、溢れる情報の中で生活者に対して「強い印象」を残すことはなかなか大変です。その中で、効率よくかつ効果的にそれを実現する方法といえるでしょう。