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三越伊勢丹三部氏が語る百貨店DX──「最高の顧客体験」を目指したビジネス戦略とIT戦略

Biz/Zine Day 2020 Autumn レポートVol.10:株式会社三越伊勢丹 三部智英氏

 郊外型SC開発、リーマンショック、ネット通販の隆盛……1990年代から様々な環境変化にさらされながらも、かつて「ハレの日に行くお出かけの場所」だった百貨店は、最高の接客を提供する小売業の地位を保ち続けている。そんな中起こった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行。小売業界全体が厳しい状況に置かれる中、百貨店はどのような対策を考えているのだろうか。
 先日行われたBiz/Zine Day 2020 Autumnでは、株式会社三越伊勢丹の三部 智英氏が登壇。コロナ以前から始めていた三越伊勢丹グループにおけるDXの取り組みと、それを支える基盤作りについて語った。その内容を紹介する。

[公開日]

[講演者] 三部 智英 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 テクノロジー DX 小売 百貨店

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三越伊勢丹の独自性・優位性を活かしたOMO戦略

 三越伊勢丹といえば、約22,000人の従業員を抱え、年間入店客数は約2億4,000万人以上を誇る、百貨店業界トップクラスの大手企業である。伊勢丹新宿店、日本橋三越本店を旗艦店として国内外52店舗で展開している百貨店グループであり、2019年度の1.1兆円超という売上高のうち、百貨店事業における売上高が9割強を占める。※2020年3月期時点、店舗情報は2020年9月時点

 三越伊勢丹グループのDXは、同社の持つ独自性や優位性を活かした領域から小さく始まった。中でも昨年から始めたコスメ・ビューティ・化粧品オンラインストアmeeco(ミーコ)は、コロナ禍においても順調に成長し、リピート顧客のみならず新規顧客を獲得して、前年の2倍強で推移している。

 また、食材宅配サービスISETAN DOORというサービスも順調だ。定期食材宅配サービスを手掛けるオイシックス株式会社と協業し、デパ地下グルメで有名な伊勢丹のバイヤーが選んだ商品を中心にした定期宅配サービスで、コロナ禍の巣ごもりニーズを捉えたこともあり、昨年度の2倍を超える実績で推移しているという。

 さらに、小さな贈り物も手に入るカジュアルギフトサイトMOO:D MARK by ISETAN(ムードマークバイイセタン)は、伊勢丹のギフトコンシェルジュが厳選した品や、ギフトアイデアが楽しめるとして、規模は小さいながらも、こちらも好調である。

 先行して始まったこれらの小さな取り組みにおいて得られたことは、数字だけではない。

「コンテンツ作成やマーケティングのノウハウ、分析データの使い方、UXの改善など、様々なプロセスをこれらのサービスを通して経験することによって、“店頭中心”という従来型の仕事のやり方と異なる、デジタル時代の仕事の進め方を学ぶことが重要だった。これらを通じていよいよデジタルを活用した、接客の質の向上と顧客接点の拡大、百貨店事業のシームレス化に取り組むフェーズに入ってきました」

と三部氏は話す。

 シームレス化(OMO)の一環として2020年6月に行われたのは、三越伊勢丹オンラインストアとアプリの刷新である。約10万型の商品をオンラインストアに掲載し、店舗に行かなくても付加価値の高い体験を、百貨店の強みである“人”による接客力・目利きを活かしたキュレーション記事や、オンラインサイトコンテンツを通じて提案。それによって、顧客は店舗でもオンラインでも買い物を楽しめるようになり、オンラインでのチャット問い合わせ、サービス予約、店頭での接客予約などが可能になる。店舗での買い物も便利になり、探しているものや予期せぬ良いものに出会えるような、店舗でもオンラインでも最高の顧客体験を提供するための、オムニチャネルの土台がようやく整いつつある状態なのだ。

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