「失敗の本質」とは成功体験を単純化して受け継ぐこと
宇田川:『失敗の本質[2]』では、日本軍が負けたのは「“日本海海戦に艦隊決戦で勝利した”という成功体験があって、“艦隊決戦主義”というパラダイムを捨てられなかったからだ」と説明されています。だけど、その説明に対する一般的な解釈には、抜け落ちている部分があると思っています。本当に問題だったのは、過去の成功を単純化していく動きが起きたことです。
どういうことかと言えば、日本海海戦での勝因は、数の劣位という状況に対して周到に戦術を立案し、最先端の技術や徹底した訓練と情報策定機能で迎え撃ったことです。ところが勝った後には話が単純化され、「我々の主力は戦艦だ」ということになって資源配分が硬直化していきます。だから国費の9%も使って「大和」と「武蔵」を作る意思決定に至りました。航空戦力の有効性は示唆されていたにもかかわらず、です。