サブスクリプション化の最大のメリット
アドビがソフトウェアの販売方法にサブスクリプション方式を導入したのは2012年のことだ。それまで、ユーザーはソフトウェアの新規購入やバージョンアップに数万〜数十万円を払っていたが、それらの製品の最新バージョンが月額数千円から利用できるようになった。2013年にはパッケージ版を廃止し、サブスクリプション販売のみに切り替え、業界を驚かせた。
サブスクリプション化は、アドビにとって次のようなメリットをもたらした。1つは、最初に支払う金額が下がったことで非常に多くのユーザーを獲得できたこと。2つ目は、製品を改良するサイクルの早期化だ。パッケージ版を売っていたときは、次のバージョンを提供できるのが早くても12ヶ月後だった。クラウドで製品を提供することでこのような制約がなくなり、最新の技術を素早く提供することができるようになったのだ。また、サブスクリプション化は売り手にとって、売り上げや収益性の予測がしやすくなるというメリットもある。
しかしサブスクリプションモデルの最大のメリットは「お客様と直接やり取りできるようになったこと」だと、マクリディ氏は言う。
「アドビがサブスクリプションモデルに移行したとき、多くの人は懐疑的な目で見ていました。しかし、それによって私たちはお客様の身近な存在になり、エンゲージメントを獲得できるようになったのです」
アドビは先に触れたDDOMという考え方に沿って、カスタマージャーニーにおける発見、試用、購入、利用、更新の各段階に注目し、データから得た洞察に基づいて戦略を推進している。これが可能になったのは、クラウド製品の提供によって顧客と常につながっている状態を実現したからだ。
「DDOMによって、社内の誰もが一貫した形でお客様を見ることができるようになりました。DDOM内の情報が、『唯一の真実』となるのです。我々はこれに基づいてお客様とやり取りをしますし、イノベーションやM&Aも実現していくのです」