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「人的資本経営」とは何か

人材版伊藤レポートの中核「人的資本経営」とは──組織を捉える3つの型、パーパスの浸透と策定、企業文化

第2回

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「人的資本経営」と「経営学での事業と組織の系譜」

 「人材版伊藤レポート」では、「人的資本経営」を実現するための人材戦略を提案している。

 「人的資本」という概念は、アメリカ経済学会会長を務めノーベル経済学賞を受賞したセオドア・シュルツ氏が1960年に提唱。同じくノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学教授ゲイリー・ベッカー氏の1964年の著書『人的資本』にて「個人」の教育投資の費用対効果がモデル化された。

 「人材版伊藤レポート」では、「人的資本」として「個人」へのアプローチよりは「組織」へのアプローチを主眼としているところが特徴である。具体的には、人材戦略の「3つの視点」として、「経営戦略と人材戦略の連動」「As is-To Beギャップの定量把握」「企業文化への定着」を提案している。これらは「事業と組織のリンク」「数字と組織のリンク」「個人と組織のリンク」とそれぞれ解釈でき、解説していきたい。

1:事業と組織のリンク

 組織づくりは「絶対解」があるのではなく、事業に合わせた「最適解」があるという側面を持つ。「人材版伊藤レポート」では、以下のように言及している。

「企業を取り巻く環境が大きく、かつ、急速に変化する中で、持続的に企業価値を向上させるためには、経営戦略・ビジネスモデルと表裏一体で、その実現を支える人材戦略を策定・実行することが必要不可欠である」

「経営戦略やビジネスモデルが企業ごとに異なるものであるのと同様に、人材戦略もまた企業ごとに異なるものであることから、企業は自社のビジネスモデルや経営戦略に向き合い、自社に適した人材戦略を考える必要がある」

 経営学では、1962年にアルフレッド・チャンドラー氏が事業部制組織の研究から「組織は事業戦略に従う」と唱え、1979年にイゴール・アンゾフ氏は市場環境を「乱気流」と称し「事業戦略は組織に従う」と唱えた。

 経営学は、前者の流れを汲むマイケル・ポーター氏らの「事業」に着目した「ポジショニング理論」と、後者の流れを汲むジェイ・バーニー氏らの「組織」に着目した「ケイパビリティ理論」の両輪を発展させる形で進化している。両者を鑑みると、事業と組織は商品市場に適応するための顧客価値(バリュー)と、顧客価値を生産する組織の機能分化(バリューチェーン)の特徴によって整理することができると考える。

 2019年に発表されたスタンフォード大学教授のチャールズ・オライリー氏の共著書『両利きの経営』にあるとおり、顧客価値を試行錯誤して探している新規事業における「知の探索」と、顧客価値が定まっており改善している既存事業における「知の深化」では異なる組織マネジメントが求められる。

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この記事の著者

真砂 豊(マナゴ ユタカ)

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