カーボンニュートラルに向けたEVの普及にはランニングコスト・乗り味の理解促進がカギ
今回の調査では、EVの購入意向別の分析を行うことで、従来の調査でEVの3大課題としてきた車両価格・航続距離・充電設備の背景を読み解き、日本政府が目標に掲げる2030年EV普及率20~30%に向けて重要な役割を持つ、EV興味あり層(アーリーアダプター)への普及のカギが燃料代や整備費用など含めた「ランニングコスト」、および加速感やドライビングレスポンス、乗り心地も含めた「乗り味」の理解促進にあることを明らかにした。
本調査における「購入意向」はイノベーター理論を参考に、EV購入予定層(イノベーター)、EV興味有り層(アーリーアダプター)、EVフラット(アーリーマジョリティ)、EV懐疑(レイトマジョリティ)、EV否定(ラガード)の5段階で分類。
調査結果の主なポイント
- EV購入予定層(イノベーター)はEVの走行性能や付加価値に高い関心があり、自宅充電がメインであるためEV購入において充電インフラに対する大きな制約は感じていない。ランニングコストを含めたトータルコストでの節約額(TCOメリット)によるEVの価格優位性も理解しているため、車両価格がガソリン車より高額でも多く支払うことができる。
- EV興味有り層(アーリーアダプター)は、環境面への配慮や電力インフラとしてEVに関心があるが、加速感やドライビングレスポンス、乗り心地等の車としての魅力を認知できておらず、EVフラット層(アーリーマジョリティ)以降は、EVのメリットを十分に認知できていないことに加え、出先・自宅の充電インフラ設置状況に不安を感じている。
- EV価格がガソリン車より高額でも許容できると回答した割合は、全体で17.2%に留まったが、TCOメリットを認知すると、TCOメリット分もしくはそれを超える価格までEVが高くても良いと回答する割合が57.1%まで達する結果となり、EV興味あり層では78.5%に達するなどTCOメリットの認知・訴求の効果が明らかとなった。
- 直近でのEV普及に際し鍵を握るEV興味有り層(アーリーアダプター)には、TCOメリットによる価格優位性の訴求や、試乗体験等を通したEVの走行性能に対する魅力の訴求といった施策が重要。
デロイト トーマツ グループ 自動車セクター ディレクター 後石原 大治氏は以下のように 調査結果を分析している。
- 日本政府は2030年にEV普及20-30%の目標を掲げており、その達成に向けてはアーリーアダプターの取り込みが鍵を握る。そうした中で、今回の調査結果は、アーリーアダプター攻略のカギはTCOやEVならではの乗り味への理解促進であることを示しており、通常の新モデル投入時以上に丁寧かつ時間を掛けた顧客コミュニケーション、及びそれを可能にするための販売員教育が必要なことが推察される。また、中長期での更なるEV普及(マジョリティの取り込み)に向けては充電インフラの整備は不可欠で、足の長い取組に向けては早い内から計画的に進めていく必要があることが示された。