UXコンセプトツリーで実現する“来店後体験”の最適化
開発プロセスで何より重要なのは、「自社の強みや価値を生かしながら、利用者視点に立ってユーザ体験を設計すること」であると染矢氏は強調する。具体的に、ゆめみでは例えばペルソナ、カスタマージャーニー、UXコンセプトツリーを作ることを提案している。
業界に関わらず、ペルソナは既存データを分析した上で作る。詳細情報やパーソナリティなど、一見、よくある項目に見えるかもしれない。しかし、小売業で着目すべきは「企業の店舗出店戦略」である。店舗の出店戦略が一等地と呼ばれる場所なのか、駅から少し離れた二等地なのか、住宅地にある場所なのか。それによってアプリ等を活用するユーザのシーンは変わるため、これから先の顧客体験を作っていく上では、この点はぜひ押さえておきたいポイントである。
カスタマージャーニーマップは、ユーザのリアルな感情、行動、それに対する企業との接点を可視化したものである。店舗を持つ企業向けに作る場合は、来店前、来店中、来店後、それに加えてLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)を考えて、再来店に関して定義することを、ゆめみでは勧めている。
今後、DXが加速する世界では、来店後の体験をどう描くかが重要になってくる。最近ではアパレル業界の企業がクリーニング事業を手掛ける企業と提携したり、ヘルスケア事業の企業が治療の進行・症状の抑制にフォーカスして顧客体験を作ったりと、購入後のアクションを見越した体験を描くようになっている。ユーザのアクションの後の体験を見越した設計が重要である。
ユーザの様々な状態や環境ごとに、どのチャネルが最適で、そのチャネルを通じて提供するユーザへの価値は何なのかをカスタマージャーニーマップでは整理していくが、多くの場合に見過ごされてしまうのが「ユーザに提供する価値」そのものである。これは、のちのちベンダーと作っていく新しいアプリやサービスの機能につながっていくため、ジャーニーではこの点を押さえるのが重要である。
UXコンセプトツリーは、カスタマージャーニーマップの内容を、ユーザが中心となるコンセプトへ昇華させるために作る。これがないと、そのサービスやアプリなどを「◯◯ができる◯◯機能」などと、機能軸で言語化してしまうことにつながり、ユーザ体験が機能に対する後付けになってしまうからである。ペルソナやカスタマージャーニーマップで可視化してきたユーザのニーズを、そのニーズに対して具体的機能、具体的提案が何なのかを、自社の強みを理解しながら整理し、見えてきたコンセプトを最終言語化するのが、UXコンセプトツリーである。