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「変革は8割反対がちょうどいい」東大松尾教授とビザスク端羽氏が語る、グローバルで戦う大企業の変革

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 株式会社ビザスクが2月22日に開催した「ビザスク Innovation Day 2022」より、KEYNOTE「変革への挑戦」の様子をお届け。東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授 松尾豊氏による講演から「r(成長率)よりもt(時間)を大きくする」というDXの本質の解説と、それをもとにした、松尾氏と株式会社ビザスク 代表取締役CEO 端羽英子氏による企業変革に関するディスカッションを紹介する。

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DXの本質は「tの値を大きくする」

 最初に、多くの企業が取り組んでいるDXについて語った。松尾氏が専門としているAIの進化や、松尾氏の松尾研究室での活動とも通じる考え方として、以下の式があるのだという。

y(t)=a(1+r)^t

 これは基本的な複利計算の式で、y(t)をt年後の金額、aを元本、rを利率、tを運用期間としたものだ。金融商品を選ぶ際は、このうちrが注目される。それは、rの値が大きいほど、複利の効果は大きいからだ。企業の場合も、r(成長率)を大きくする、つまり大きな利益をあげることで、次の投資も大きくなり、より大きな成長を実現することができると考えられる。しかし松尾氏は、DXの本質はtの値を大きくすることだと主張する。生産や物流、販売のサイクルとして“1年”が基本単位だったtを、すべてをデジタルで完結させることで短縮させ、便宜上大きくすることができるのだという。つまり、1年よりも早いサイクルで複利を回すことこそがDXだということだ。

 実際、年率5%の成長を25%にした場合と、年率5%の成長を5倍速にした場合、描く成長曲線は似た形となる。松尾氏は、たとえばアプリのアップデートを一瞬で展開することができたり、ABテストを繰り返して何度でも改善することができたりするように、デジタルによってtの値を10倍、100倍にすることも可能だと話す。要するに、指数的な成長が可能となるのだ。この実例として松尾氏が紹介したのが、rを増やすことに努めてきた自動車業界と、tを増やそうとしているGAFAの売上推移の比較だ。前者は60年で9倍の成長だが、後者は13年で13倍、しかも指数的に成長していた。

 松尾氏は、注目すべき点として、指数的な成長がインターネット企業だけでなく、リアルの世界にも広まりつつあることを挙げる。その典型例として、9年で200倍の成長を遂げたテスラが挙げられる。テスラは、

  • ディーラーを持たない
  • テレビCMではなくクチコミマーケティング
  • ワイヤレス・ソフトウェア・アップデートを行う
  • 工場の自動化を推進する

という特徴があるが、これはいずれもtを大きくするための施策だというのだ。

 トヨタ自動車、フォルクスワーゲンなど上位8社の時価総額の合計よりもテスラの時価総額の方が大きいと話題になったが、他社がrに注力する中、テスラのみがtに注力しており、それが将来の成長として織り込まれているのだと松尾氏は語る。

 rではなくtを大きくすることこそがDXの本質だが、デジタル化やAI化を進めていくと、人間がボトルネックとなってくる。そこで、

  • リーンスタートアップ
  • 仮説思考
  • 多様性
  • 挑戦と失敗に寛容であること
  • オープンマインド、コラボレーション
  • フラットな組織

が大切となる。つまり、tを大きくしようとすると、組織は自然とシリコンバレーのスタートアップのようになるというのだ。松尾氏は、日本企業はシリコンバレーの“雰囲気”を真似ようとしてきたが、それよりもrではなくtを重視することが大事だと主張する。

 業務のサイクルタイムを変えることなくデジタル化をしても意味がない。試行錯誤しつつ全体を速くしていくことが重要だ。それによって、既存事業の顧客の変化に対応できたり、新たなニーズの探索やプロダクトの最適化ができたり、事業を拡大させたり、新事業を生み出すことができる。まずはそれが可能な組織に変革していくことが大事なのだ。

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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