働く人も経営者も “望んでいながら、出来ていないこと”
働きがいを求める若者が増えている。いや、若者だけではなくて30代、40代でもやりがいのある働き方を求める人が多い。意味ある仕事をして、自分の力を発揮して、自分の考えたことを実現し、会社や組織、さらに、社会に貢献したいという気持ちをもっている人が増えてきた。数字を達成すために働くのではない。上司から言われたままに働くのでもない。自分なりの力を発揮して貢献したいと思っている人が多くなっているのだ。
自ら考え、自ら動く社員になってもらいたい
一方、私たちはコンサルティングをしていて、経営者の声を聴く。経営者からの最も多い要望が社員に主体性を持たせてほしいという依頼。「もっと自ら主体性を持って考え、自ら動く社員を増やしたいのだが、なんとかならないだろうか?」というリクエストが多く寄せられる。経営者には切実なニーズである。昔と違って環境の変化が激しく、トップだけでは顧客や協力会社から来る要望や、マーケットでの変化がつかみ切れない。社員一人ひとりが顧客や取引先のニーズを敏感に察知し、業務を改善し、変化をつくりだす行動が求められるのだ。
コンビニではその土地のニーズや季節行事に合わせて提供する商品やサービスを変えるのは当たり前になっている。マクドナルドのようなファーストフードチェーンも今期の赤字を契機に商品メニューを店舗ごとに変えつつある。
現場で働く社員が主体性を持って自分で考え、提案し、自分が行動して成果を出す動きをしてほしい。そうすれば、社員が幸せに働き、満足度を上げ、喜びをつくりだせるはず。それが、企業が継続的な成長になる。そう思っている経営者が増えてきた。
なぜ働きがいをもてないのか?
働きがい。主体的で充実した働き方。社員も求めているし、経営者も求めている。しかし、多くの経営者はどうしてそれを実現できるかが分からない。また、働く人もどうしたら充実して働けるようになるかがわからない。お互いが思っていることは極めて似ているのに、実現する方法が分からないのだ。
どうしたら、実現できるのだろう?
実は、「ポジティブ心理学」が回答を与えてくれる。
ミシガン大学のロス・経営大学院にポジティブ組織センター(Center for Positive Organizations)がある。写真のキム・キャメロンが率いている。心理と経営を合わせて考える優秀な教授陣が集まった集団だ。ポジティブな組織ではどのようなことが起きるかをポジティブ心理学と経営学を合わせて研究しているのだ。キャメロンらの研究により、従業員の心のエネルギーを高くすると、高い生産性をあげ、組織の目的に対して優れた成果を出すことが分かってきた。