“海岸線”を思い描き、新たなビジョンを作り出す
こうしたビジョンはどのように生み出されるのだろうか。石井氏は、1995年にMITメディアラボへ移籍した際、同ラボの創設者で名誉会長のニコラス・ネグロポンテ氏から「今までやったことを続けるな。まったく新しいことを始めろ。それが人生での最高の贅沢だ」といわれ、NTT時代の「シームレス・インテグレーション」のビジョンを続けるのではなく、新しいビジョン作りを行なったという経験がある。その経験をもとに、石井氏はビジョン作りで大事なものを自身が好きな卓球に絡めて、「前陣速攻・独自のオリジナルな回転・意表をつく新鮮なコース」と説明する。
「タンジブル・ビット」というビジョンが生まれる際に行なった、具体的な手法はこうだ。まず1995年当時に主流であったコンピューターの入出力方法であるグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)、つまり「目に見えて、一人の人間がリモートで操作でき、さまざまな目的に使える入出力方法」に対して、まったく異なる軸を考えた。