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MIT石井裕氏が語る、独創的なアイデアを具体化し「世界中の人々をインスパイアする」ビジョンの作り方

講演者:MITメディアラボ 副所長 石井 裕氏

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 マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの副所長で、ヒューマン・コンピュータ・インタフェース(HCI)の研究者である石井裕氏は、NTTヒューマンインタフェース研究所での勤務を経て、1995年からMITで研究を続けている。革新的な研究を30年にわたって継続できるのは、自身が向かうべき方向を示す“進化し続けるビジョン”があるからだ。
 近年、世界や事業環境が激しく変化している中、多くの企業が独自のビジョンを掲げ、予測不可能な時代を生き抜こうとしている。そこで本稿では、ストラテジックデザインファームBIOTOPE主催で行われた「VISION-DRIVEN SUMMIT #1── Vision-Drivenの哲学と技法」より、同氏が行った基調講演の内容を紹介。石井氏の言葉から、ビジョンを持つ企業やそこで働く人に役立つエッセンスを探っていく。

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ビジョンは、激動の時代を生き抜くための「羅針盤」

 「COVID-19のパンデミックは世界に強烈なインパクトを与え、我々が想像してきた未来を大きく方向修正しました。それまでは鉄道があり、時刻表があり、地図があるといえるような世界でしたが、今では突然まったく新しい未来へ向かう特急列車に乗せられ、着いた先は地図が役に立たない世界。こういった世界では、向かうべき方向を示す羅針盤を堅持することが大切です。その羅針盤こそが、“ビジョン”なのです」と、石井氏は講演を切り出した。

 石井氏は、「ビジョンとは『夢』である」と語る。夢を思い描くこと、想像することは、ものを作り上げる創造と重なっているからだという。同氏は、これまでずっとビジョン(夢)を掲げて研究を続けてきた。

 同氏が最初に掲げたビジョンは、NTTヒューマンインタフェース研究所在籍時の、リモートコラボレーションのための「シームレス・インテグレーション・メディア(継ぎ目のない統合メディア)」というものだった。

 そして、このビジョンを具現化したのが、1992年に発明した「クリアボード」である。これは、大きなスクリーンを通して離れた距離にいる相手と共同描画や会話ができるシステムで、相手がどこを見てどんな動きをしているのかがわかるものだ。近年、Zoomなどのバーチャルカンファレンスシステムが爆発的に使われるようになったが、それを石井氏は30年前の時点で研究していた。

 この研究を1994年に発表した翌年、石井氏はMITメディアラボへ移籍することになる。それから、「タンジブル・ビット(手で触れる、実態がある情報量の最小単位)」というビジョンを掲げ、新たな研究を始めた。このビジョンは、現在主流となっているような情報を画面上で、視覚的に図やアイコンなどとして示す方法ではなく、物理的に触ったり感じたりできる方法で示すことを目指している。

 そして、そのビジョンを体現したものを、石井氏が率いるタンジブル・メディア・グループではすでに発明している。たとえば「I/O Brush」は、一見普通の絵画用ブラシに見えるが、内部にはライトとタッチセンサーが埋め込まれたビデオカメラが仕込まれている。ブラシを押し付けた表面の色やテクスチャー、動きを拾うことができ、それをキャンバス上で使って、新しい表現を生み出すことができるのである。

 なお、石井氏は2008年よりタンジブル・ビットをさらに発展させたビジョン「ラディカル・アトムズ(過激な、革命的な原子)」を掲げて研究を進めている。これは、デジタル情報をリアルタイムで実体化し、直接操作可能にするもので、瞬時にピクセルにも反映されるという表現方法を示すビジョンである。どういうことか。

 たとえば石井氏は、「PerfectRed」という特殊な粘土のビデオ・プロトタイプを作っている。

「PerfectRed」(YouTube)

 一見普通の赤い粘土だが、CAD(コンピューター支援設計)のソフトウェア機能を備えている。手で丸く形作れば完璧な球となり、それに指を突き刺して穴を作れば、完璧な円柱形にくり抜かれた穴が開き、2つの物体を手で押し付ければピッタリとつながった形になるといったように、形状記憶を持つ粘土となっているのだ。

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フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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