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トライアルが目指す「新たな小売業」への変革──米国で見た“3つの戦略トレンド”から学ぶDX推進のカギ

「Biz/Zine Day 2022 Autumn」レポート

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米国の小売業界で起こっている深刻な人手不足

 すでに数々の成果を創出し、日本では流通・小売業界でDXの最先端に立つトライアルホールディングス(以下、トライアル)と、そのAI/IoT活用を支援しているグループ会社Retail AIだが、永田洋幸氏(以下、永田氏)は「改善すべき点はまだまだ山積している」と語る。

 永田氏は定期的にDX先進国である米国を訪問し、小売業界で起こっているテクノロジー活用の新たなトレンドを視察している。そこで得たヒントや学びは、トライアルのDX推進に役立てられている。

 2022年の米国視察では、リテールを取り巻く環境変化をいくつも目の当たりにした。まずは驚異的な物価高。日本でも物価の上昇は進んでいるが、米国のそれとは比べものにならないという。永田氏が空港で買った飲料水のペットボトルは1本4.14ドル(約600円)、格安で知られるウォルマートで購入しても2.59ドル(約370円)であった(視察当時〈2022年夏〉の価格)。また、ガソリンの価格も高騰しており、流通業界ではEV車へのシフトが加速している。

 そして、もう1つの大きな課題が「深刻な人材不足」だという。

「ニューヨークの小売業が年収1,000万円の待遇で店舗スタッフを募集していますが、それでも十分な人手は集まっていないようです。また、あるファストフードチェーンでは、時給約3,000円に加え、面接に訪れた人全員へ50ドルの謝礼金を支払うキャンペーンを行っているものの、満足な成果が得られていないと聞きます。さらには、テクノロジーの開発に当たるエンジニアも、より給与の高いテック企業へ流れてしまっており、小売業界の人材不足は想像以上に深刻な状況です」(永田氏)

リアル店舗の衰退を打開する「3つの戦略トレンド」

 もちろん、企業側は人手不足を解決すべく、売り場のデジタル化やDXに必死になって取り組んでいる。たとえば、Amazonは直営店「Amazon Fresh」におけるスマートストア化を進め、売り場の人材不足を補うべく、商品をカメラと重量センサーで自動認識する買い物カート「Dash Cart」を導入した。しかし、依然として人材不足を補えるほどの成果は出せていない。来店客が肝心のカートをあまり使用しないという、定着化の課題を抱えているという。

 「人材不足は米国だけの課題ではなく、日本でも今後より深刻化していくことが予想されます」と永田氏は語る。日本の小売・流通業界は労働集約型の典型モデルとされており、特に店舗や物流の現場では多くの就業者を必要とする。しかし離職率が高く、店舗スタッフが足りていない光景は、何年も前から全国のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで当たり前になっている。

 加えて、AIやIoTを駆使した省人化も遅れている。「店舗の在り方や既存の仕組みを変えていかなければ、小売業界全体としてリアル店舗の事業が衰退していくことは避けられないでしょう」と語る永田氏。では、何をすればよいのだろうか。同氏は、米国で起こっている以下3つの戦略トレンドを紹介した。

  • Frictionless:ストレスフリーな顧客体験戦略
  • Unified data:データ統合戦略
  • Data monetization:データによる収益化戦略
©Retail AI Inc.
[画像クリックで拡大表示]

 トライアルも、この3つのトレンドに沿ったDX戦略を立案し、今まさに実践しているところだという。次ページから1つずつ解説していこう。

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この記事の著者

中沢 弘子(ナカザワ ヒロコ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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