SABミラーがおこなった、マルチ・ブランドのデータ比較分析
もうひとつは、世界第二位のビール会社である、SABミラー(SAB Miller)の例です。SABミラーは、全世界80カ国、ピルスナー・ウルケル、ペローニ、ミラー、グロールシュなどのビールをはじめ、世界で200以上のブランドを持っています。そして、それらすべてのブランドが世界中でどのように広がっていて、どのようにメッセージが届いているかを、フェイスブック、ツィッター、インスタグラムなどのソーシャルメディアのデータから分析しました。 ソーシャル上のテキストの自然言語処理ではなく、ブランドに関するメッセージがどのぐらいの速さで、どのような地域から伝播しているかを定量的に分析するというものです。これまで分散していたデータソースを、ひとつの統合的なデータ・ビューに集約することで、別々に展開していたブランドを統合的に見ることができるようになったのです。
――「データ分析」と「コミュニケーション」を一体化させたことで、成功につながったということでしょうか?
彼らは、もともとデータを持っていなかったわけではありません。非常に戦略的で、データ分析も以前からおこなっていました。ただ、業績を飛躍的に向上させることにつながったのは、いくつかのポイントがあります。ひとつは、データをひとつのビューで観測できるようにしたこと。これは、複数のデータそのものを統合したということではなく、複数のデータソースを関連づけ、つなげるようにしたということ。もうひとつは、データをIT部門や専門家の労力に頼らず、ビジネス現場のリーダーがいつでも入手できるようにしたこと。そして、データの分析に時間をかけ準備し報告するというプロセスをなくしたということです。
「新たな事業を創出する」ということだけではなく、「既存のビジネスを飛躍的に高める」ということも、イノベーションの一貫であると私は考えています。「これまで見えていなかったことがわかる」ことで、持続的かつ飛躍的な成長につながります。
会議の生産性を高める
――ダッシュボードでデータを見ながら、オンライン上でミーティングをおこなうことは、会議のスタイルを変えますね。日本では、結論の出ない会議を長時間おこなう企業が多いですが、どのような改善策が考えられるでしょうか?
まずミーティングのやり方を変えるということです。週次や月次、四半期の会議や報告のために、データを準備するというやり方では、現在のビジネスのスピードに対応できません。データは常に、アップデートされた状態で「そこにある」べきです。「データを報告する」のではなく、参加者全員がデータを共有し、検討しながら、つぎにどのようなアクションを取るべきかを議論する。その場でデータをドリルダウンしたり、見方を変えたり、分析と議論を平行しておこなっていく。そのために、Domoでは、DomoBuzzというソーシャル型のコミュニケーション機能と、いくつかの指標からデータを整理して見やすくする「カード」を用意しています。
そもそもビジネスに関わるキーとなる指標を洗い出して、カードとして設計しておく。いったん作ってしまえば、カードのデータはリアルタイムに更新される。そしてカードの構成は、ビジネスに適合させ、精度を上げていくことができます。この場合、大切なことはカードをただ並べるのではなく、ビジネスの目的の上で必要な指標を策定し、そのカードを見れば今後のビジネスの見通しが得られる。これが従来のBIのアプローチと、大きく異る点です。