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ロート製薬と三井住友トラストHDは、なぜ経営戦略の中心に「ウェルビーイング」推進を実装したのか?

「Unipos Summit 2023」レポート

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ウェルビーイング経営を実践し始めた日本企業

小布施 典孝氏(以下、敬称略):自己紹介を兼ねて、まずは皆さんが携わっているウェルビーイングの取り組みについてお伺いできればと思います。

髙倉 千春氏(以下、敬称略):ロート製薬は会社のビジョンとして「Connect for Well-being」を掲げています。これは、人々がカラダだけでなく心や精神、社会的にもすこやかな状態を実感できるような価値を社会に提供するという想いから策定されたものです。

 しかし昨今、日本企業ではお客さまだけでなく、組織の環境や社員のエンゲージメントなどを高める「ウェルビーイング経営」の実装が大きな経営課題となっています。ロート製薬も、2022年10月に“個を活かすWell-being経営の実現”に向けて新たな人事制度を発表し、積極的に発信を行っています。

 現在、その人事制度のドライバーとなる4つの施策を推進しているところです。1つ目は「個に焦点を当てた動的人財マネジメント」、2つ目は、社員一人ひとりの“仕事の価値”を、業績だけでなく、全社・社会的視点で評価する「ロートバリューポイント」。3つ目に、個人のウェルビーイングを評価する「ウェルビーイング・ポイント」。そして4つ目に、経験価値を高める「複業・兼業の推進」に取り組んでいます。

矢島 美代氏(以下、敬称略):三井住友トラスト・ホールディングス(以下、三井住友トラストHD)では、元々“お客さま本位”のカルチャーが根付いており、社員のウェルビーイングに本格的に取り組み始めたのは最近です。2021年より、パーパスの実現を支える風土改革を推進するために、人材戦略の中心に「社員のウェルビーイング」を据えて、人的資本のバリューアップを図っています。

 社員のウェルビーイングが向上することで、社会課題の解決が加速し、お客さま・社会のウェルビーイングが向上する。社員がそれを誇りに感じて、さらなるパフォーマンス向上につながる。こうした「幸せの好循環」をつくり上げながら持続的に企業価値を向上させていくのが、三井住友トラストHDが目指すべきウェルビーイング経営だと考えています。

小布施:髙倉さん、矢島さん、ありがとうございます。お2人とも、自社のウェルビーイング推進を主導する取り組みをされていますよね。次に、世界のウェルビーイング分野の発展を研究・支援する立場にいらっしゃる石川さんの自己紹介をいただけますでしょうか。

石川 善樹氏(以下、敬称略):私はWell-being for Planet Earthの代表理事という立場にいますが、父が産業医としてウェルビーイングを研究していたため、物心ついた頃からこの領域に関連した話をシャワーを浴びるように聞いていました(笑)。

小布施:物心ついた頃からというと、まだ日本で「ウェルビーイング」という言葉が浸透していないような時代ですよね。どういったお話を聞いていたのでしょうか。

石川:もちろん、社員の心身の健康に関する話もありましたが、企業に関するウェルビーイングの話というのはそれだけではありません。空気の良い組織は、社長が社員のことを我が事のように「うちの社員はすごい」と話しているが、反対に、自分のことやお金のことばかり話す社長が率いている会社は空気が悪い、といったような話も、立派な組織のウェルビーイングに関する話題ですよね。

 私は元々、予防医学や行動医学などを専門分野としていますが、こういった話や事例を理論化しようと研究に取り組んでいく中で、ウェルビーイング経営という課題に行き着きました。

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この記事の著者

中沢 弘子(ナカザワ ヒロコ)

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