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Zero to IPO 

大櫃直人氏と朝倉祐介氏が語る、IPO前後に必要なバンカーとVCの目利き力──デットとエクイティの融合

『Zero to IPO』出版記念対談 Vol. 2【大櫃直人×朝倉祐介】前編

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 翔泳社より『Zero to IPO 世界で最も成功した起業家・投資家からの1兆ドルアドバイス 創業から上場までを駆け抜ける知恵と戦略』が、4月中旬に発売される。本連載では、日本の起業家や投資家、研究者などと本書に関連したテーマを設定し、対談を行っていく。第2回は、株式会社みずほ銀行 常務執行役員 大櫃直人氏とアニマルスピリッツ合同会社 代表 朝倉祐介氏の対談をお届けする。朝倉氏は、経営者、そして投資家の立場で、大櫃氏はメガバンクの立場から長らくスタートアップ界を支えてきた。前編では、現在のデットファイナンスとエクイティファイナンスの違いやそれぞれの強み、現在のミドル、レイターステージの調達環境などについて語ってもらった。

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バンカーとしての意義を見出だした、渋谷の地で出会ったスタートアップの世界

大櫃直人氏(以下、敬称略):私がスタートアップの支援、特にデットだけでなくエクイティの観点からもファイナンスの支援をしている背景をお話しさせてください。

 まず、私とスタートアップとの関係は10年ほど前にさかのぼります。渋谷中央支店の部長になったばかりだった私は、創業期のメルカリ、マネーフォワードなどの素晴らしい企業やその経営者とお付き合いをするきっかけをいただきました。これがとても刺激的でした。

 当時は、ある意味では「銀行員が自分の仕事に誇りを持つのが難しい情勢」でした。私が就職した35年ほど前は、今日よりも明日、明日より明後日と会社の成長を目指す企業がほとんどでした。

 ところが、経済が落ち込み、人口が減っていくなかで、守りの姿勢の会社が増えてきたことを感じました。現状の顧客を大事にして現状の売上や利益を守る。設備投資や海外進出はしない。もっというと人員の削減もありえる。そうしたお客さまに対して融資や別のお客さまの紹介を提案しても「うちはお金も十分にあるし、お客さんを増やそうとも思っていないのでそこまで頑張っていただかなくても」と言われてしまうことがあると、銀行員としては自分の仕事の意味を見出しにくくなってしまうのです。

 一方、渋谷では今日よりも明日を考えて、新しい顧客や資金を求めてくれる、エネルギーに満ちあふれた人が数多くいました。その人たちが自分と近い年代だということもあり、まさにバンカー冥利につきると感じました。これが、スタートアップの支援をしたいと思った1つ目の原体験です。

 また、日本の産業が少しずつ停滞しており、産業の新陳代謝が米国や中国に比べてあまり起こっていない今、銀行に改めて問われているのは、新しい企業を発掘しその成長をサポートすることです。そこで鍵となるのがエクイティプレイヤーであるVCなどとの連携です。

 スタートアップ業界に関わるようになって、デットファイナンスとエクイティファイナンス、つまり融資と出資の違いを改めて意識するようになりました。昭和は銀行資本主義と言ってもいいほどに、デットファイナンスを活用しながら各社が事業を成長させた「融資の時代」でした。

 ところが、平成は米国や中国の企業を筆頭に、VCが育ててきたスタートアップが台頭した「出資の時代」でした。その証拠に、平成元年の時価総額ベスト10と令和元年のベスト10を比較すると、平成には日本の企業は10社中7社もあり、しかもそこに金融機関が含まれていました。しかし令和元年には日本の企業はいなくなっており、米国や中国のIT系の「出資で成長しVCが育ててきた企業」がずらっと並びました。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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