創業200年超の老舗が、なぜ新規事業創出を?
──石塚硝子が創業されたのは1819年(文政2年)だとお聞きしました。200年以上の歴史があることになりますね。
下宮尚己氏(以下、敬称略):そうですね。社名の通り、創業時からガラス製造を主事業としてきました。その後は、明治時代に入ると瓶の製造、戦後には電球バルブの製造といったように、時代が進むにつれ、ガラス加工技術に関わる新たな事業に進出していきました。1962年に上場し、1971年にはガラスセラミックスを開発するなど、弊社独自の技術を活かして、今まで世界になかったような新製品の発明・開発にも取り組んでいます。
現在では事業も多様化しており、ガラスのほかにもプラスチックや紙容器、金属キャップにPET容器など、さまざまな素材において製造を行っています。会社の規模も次第に大きくなっていき、日本各地に研究開発の施設や工場があるほか、中国にグローバル生産拠点を有するまでに成長しました。
──ガラス以外の領域でも事業を行うようになった理由とは何でしょうか。
下宮:時代やお客様のニーズに合わせて、といったところでしょうか。ただ、すべての事業に共通しているのは、「容器」に関する技術だという点ですね。
──ところが現在、容器以外の領域で新規事業開発に挑戦しているとお聞きしました。
下宮:経営陣をはじめ、社内で「非容器の分野でも事業の柱をつくっていこう」という話が出始めたことがきっかけです。そして2017年、新たな社内組織「新事業創出カンパニー」が設立されました。石塚硝子の技術やノウハウを活かして、容器にこだわらない新たな事業を生み出していこうと本格的な活動に乗り出したのです。
──非容器の分野でも事業の柱をつくっていこうと考えた理由とは何でしょうか。
下宮:弊社の主事業であった瓶の国内需要が、ここ10年ほどで縮小し続けていたのが主な理由です。その証拠に、2021年には市場の縮小に伴って関西の工場を閉鎖しています。そして紙容器やペットボトルなどといった事業においても、競合がたくさんある中で安心できない状況でした。
こうした背景があり、事業環境の変化に柔軟に対応できるような会社を目指して、事業ポートフォリオを拡充していこうという方針が掲げられたのです。ちょうどその時期に始まった新型コロナウイルスの流行も、経営変革の決断を後押しする形となりました。