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Zero to IPO 

「第三の敗戦」の克服に必要なスタートアップへの安定的な資金供給──徹底的にパクれば、周回遅れは好機

『Zero to IPO』出版記念対談Vol.1【琴坂将広✕朝倉祐介】後編

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 前編では慶應義塾大学准教授の琴坂将広氏とアニマルスピリッツ代表の朝倉祐介氏が、二種の起業家、スタートアップ業界への高度人材の流入、コーポレートバリューと自身の価値観の不一致による人生のリスクを語った。続く後編では、大企業での経験がレイターステージのスタートアップでも活用できるとしつつも、コーポレートバリューと自身の価値観がフィットする重要性を再確認する。そのうえで、周回遅れの状態を生かした徹底的な模倣戦略が日本再興の機会であること、朝倉氏が見据える「第三の敗戦」を克服するために必要な国内成長産業への安定的な資金提供に関して、議論した。

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スタートアップで輝く大企業出身者たち

朝倉祐介氏(以下、朝倉):スタートアップの先進性や優位性を強調しすぎると、大企業勤務の方に「大企業の硬直した組織風土で育ってしまった自分は駄目だ」と卑下されてしまうことがあります。しかし、大企業出身者のノウハウやナレッジが生きる場面がスタートアップでは非常に多い。まずはそのことを知っていただきたい。私も琴坂さんも関わるラクスルでは、大企業出身の方も多いですよね。

琴坂将広氏(以下、琴坂):まさにそうです。自動車会社出身の方が印刷工場のオペレーションを世界最先端のものにカイゼンされています。また金融機関や不動産会社からいらっしゃった方もいます。大企業やスタートアップのどちらかが良いという話ではありません。互いに学びあうことが大切です。

朝倉:実際、スタートアップと大企業は全く別の世界ではありません。スタートアップは創業当初のシード期からプロダクトを展開しながら、PMF(プロダクトマーケットフィット)を経て事業を確立し、レイターステージには企業組織としての高度化を目指し、またIPO後には既存事業の持続成長を目指します。特にレイターステージ以降の局面においては、大企業出身者のノウハウが大いに生きます。ただし、大企業のオペレーションに慣れきった人がシード期のスタートアップに飛び込むというのは、極端な変化を伴う、ハードルの高い行為なのかもしれません。

大企業におけるスタートアップ「プロジェクトX」

琴坂:ひとつ付け足すと、いわゆる大企業におけるイノベーションへの取り組みも、その事業に革新的な変化をもたらす取り組みの多くは、スタートアップ的だということです。たとえば日産自動車の「リーフ」や「e-⁠POWER」の開発や、トヨタ自動車での「プリウス」や「86」の開発は、草の根的な取り組みを原点としつつも、それに段階的に大きな資金と人員を短期間で投資して実現に至りました。大企業の皆さんこそ、すでにスタートアップ的な活動をされてきていますし、今こそスタートアップ的な活動が必要なのです。

朝倉:まさにそうですね。NHKでかつて放映されていた『プロジェクトX』では、そうした大企業のスタートアップ的なプロジェクトがよく取り上げられていましたね。

琴坂:大企業で働かれている方は、この先、数年待っても自分のプロジェクトXを担当できないならば、その会社からは離れることを考えてもいい。自分の根源的価値観にフィットするコーポレートバリューがある企業はきっと存在しますし、そのような環境なら生産性も上がり、社会全体にとってもプラスだと思います。欧米や中国だけでなく韓国でも、価値観がフィットしなければすぐに退職するという潮流があります。だからこそいいプロジェクト、いい成果を互いに求める緊張関係により生産性が上がっていきます。

朝倉:また、会社を辞めた人たちを裏切り者扱いするような言説をなくすことから始めたいですね。本来ならば、優秀な人材や潜在的な能力を持つ人材をマネジメントできなかったと、自分たちの活動を省みるべきです。最近はスタートアップにおいてでさえ「あの人は他社に引き抜かれた」などと、転職者を裏切り者扱いする人もいます。こうした悪い面は真似してほしくない。

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雨宮 進(アメミヤ ススム)

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