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組織戦略としてのデザイン

なぜソニーのデザイン組織は成果を残すのか──デザインの役割が変動する時代に必要な組織文化と越境人材

【後編】ゲスト:ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター 山田良憲氏、前川徹郎氏

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 本連載では、先進企業のデザイン組織への取材を通じて、組織変革の担い手としてデザイナーが今後果たし得る可能性やそのあり方を探っていく。本稿では、前編に引き続き、ソニーのデザイン組織「クリエイティブセンター」にフォーカスを当てる。60年以上の歴史を有し、ソニーにおいてデザイン機能を拡張し続けてきたクリエイティブセンター。さまざまな事業組織と連携し、新製品の開発やブランディングの向上など、豊富な実績も有している。なぜ、クリエイティブセンターはこれほどの成果を残すことができたのか。クリエイティブセンターの副センター長である山田良憲氏と前川徹郎氏に、その背景を聞いた。連載ナビゲーターは、武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科教授で、ビジネスデザイナーの岩嵜博論氏。

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なぜ、ソニーのデザイン組織は「サイロ化」を回避できるのか

岩嵜博論氏(以下、敬称略):クリエイティブセンターの特異な点は、デザインの機能を拡張しながら各事業組織と繋がり、製品化などの明確な成果を得ていることです。ここからは、それがなぜ可能なのかを伺いたいです。一般的に、大企業では組織がサイロ化し、デザイン組織がさまざまな事業組織と繋がりにくい状況が生まれがちです。それをソニーではどのように回避しているのでしょうか。

前川徹郎氏(以下、敬称略):クリエイティブセンターが自らを「クリエイティブハブ」と位置付けていることが大きいかもしれません。数年前にクリエイティブセンターは、組織のミッションや役割を再定義する取り組みを実施し、そのなかで自らの役割をデザインの力でグループ内の技術やソリューションを繋ぎ合わせる「クリエイティブハブ」と定義しました。

クリエイティブセンターのミッション
画像提供:ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター

 ソニーは2010年代からグループの分社化を進め、各事業の独立性を高めたため、サイロ化しやすい状況は他社とそれほど変わりません。ソニーグループとしてもさまざまな取り組みを通じてサイロ化回避に努めていますが、我々の場合は、自らの組織の役割を「ハブ=つなぎ役」として明示し、意識的に活動してきたことが、その一助とはなっているかなと思います。

岩嵜:「クリエイティブハブ」というコンセプトはクリエイティブセンターが自ら定義したのですよね。そのコンセプトを、どのように業務に反映していくのでしょうか。

山田良憲氏(以下、敬称略):クリエイティブセンターは設立以来、経営トップの直轄組織で経営陣と意見交換する機会も定期的にあるため、そうしたなかでクリエイティブハブのコンセプトなどを提案しました。

前川:経営陣と顔を合わせて議論する機会が多いため、自発的な提案がしやすいというのはありますね。例えば、数年前から経営方針説明会の演出にも一層力を入れているのですが、これもクリエイティブセンターからの提案でした。今年度もキービジュアルやアニメーションを活用しましたが、経営陣と議論を重ねながら演出のコンセプトやディテールを決めています。

クリエイティブセンターが関与した、経営方針説明会資料
画像提供:ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター

岩嵜:経営陣がデザインにコミットする組織文化が確立しているわけですね。お二人にとっては当然なのかもしれませんが、とても珍しい体制だと思います。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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