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コーポレート起点の両利きの経営

横河電機 阿部氏が語る、両利きの経営に必要なこと──マーケティング本部が中経やパーパスを策定する理由

【前編】ゲスト:横河電機株式会社 常務執行役員 マーケティング本部本部長 CMO 博士(技術経営) 阿部剛士氏

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 2016年にインテルから横河電機に移籍し、常務執行役員 マーケティング本部本部長(CMO)として歴史ある同社の変革を推し進めてきた阿部剛士氏。その仕事は、一般的にマーケティングの仕事として認識される範囲を大きく超える機能を持つマーケティング本部に集約するところから始まっている。結果として、同社ではマーケティング起点の「両利きの経営」が進められてきたように見える。「マーケティングマインドで企業を変える」というビジョンと、ユニークな組織体制、取り組みの中身について阿部氏が語った内容を、前後編でお伝えする。

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インテルで学んだこと、技術とマーケティングの重要性

——阿部さんは2016年にインテルから横河電機に移られたのですね。インテル時代はどのような経験を積んでこられたのでしょうか。

 つくば万博があった1985年に新卒でインテルに入り、31年間勤めました。技術職で入社したのですが、途中でマーケティングに興味を持ち始めました。「インテル、入ってる」って覚えてますか。あれは1990年に当時のインテル・ジャパン(現インテル株式会社)が始めたプログラムで、私はエンジニアとして横からそれを見ていて、「ブランド(マーケティング)の力って、すごいな」と衝撃を受けました。それで自分のキャリアを、将来的に技術からマーケティングに移行しようと決意しました。

 まずは広報室長として、全くの素人だったブランドについて勉強し、その後マーケティング本部長も務めました。インテルは技術の会社ですが、実はマーケティング力も強い会社なのです。特にマーケティングを勉強するには最適な環境でしたね。

 インテルでの最後の11年間は、シリコントランジスタ開発やサプライチェーンマネジメント部門の日本の代表を務めさせていただきました。インテルは半導体製造装置と素材を日本企業からも調達しています。「ムーアの法則」をご存知かと思いますが、この法則は日本のサプライヤーさんなくしてはできないと言っても過言ではなく、今でもそう思っています。それくらい日本の半導体装置・素材メーカーの皆さんの半導体産業全体に対する貢献度は高いと言えます。

——技術とマーケティングにまたがるキャリアは、とても珍しいですよね。

 日本では少ないですね。ですが、技術ができる人はマーケティングにも適しています。昔のモノを出せば売れた時代のマーケティング(フィリップ・コトラー氏の「マーケティング1.0」の時代)は、いかに効率よく適切なお客さんに接触し、販売するかというものでした。3C分析やSTP分析、4Pといったメソッドがそれに当てはまります。

 しかし、今の定義は違います。マーケティングは「企業戦略」そのものであり、「サイエンス」でもあります。だからこそ、理系人材こそマーケティングをやるべきだと思っています。

——なるほど。

 インテルでは副社長も務めるなど31年間楽しく仕事をさせていただいたのですが、そろそろ他のこともやりたいと考えていたときに、横河電機とのご縁をいただきました。昔からエネルギー産業とバイオ産業にも興味があり、横河電機もエネルギー産業を事業ドメインの一つとしていましたから、2016年に移籍しました。

 その際の条件として、「企業変革を実施する上で重要となる機能をマーケティング傘下に置いてもらいたい」と願い出たわけです。一般的なマーケティング部門(マーコム、リサーチ、ブランディング、デジタルマーケティングなど狭義のマーケティング)の機能に加え、私が考える広義のマーケティングのためのアセットを「マーケティング本部」というユニットの傘下に置いていただきました。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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