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Swatch共同発明者が体現する、イノベーションを「単発で終わらせない」次世代戦略と思考法とは?

「IMS SUMMIT 2023」レポート

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 イノベーションを連続して起こすためには、組織としての戦略やシステムが必要だ。Japan Innovation Networkが2023年10月27日に開催した「IMS SUMMIT 2023」の基調講演に、スウォッチ(Swatch)の共同発明者として知られるエルマー・モック氏が登壇した。20代にして当時、苦境に立たされていたスイスの時計業界を復活させた立役者であり、その後も現在に至るまで170以上の特許群を生み出してきた同氏は、自身の活動や生き様においてもイノベーションを生むプロセスを体現している。講演では、同氏の成功の裏にあった取り組みや考え方のほか、日本企業が新たなアイデアを事業化につなげるためのヒントなどが語られた。その内容をレポートする。

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その活動は本当にイノベーションと言えるのか?

 スイスの時計産業は1970~80年代、ある出来事によって急激に破壊された。その出来事は日本によって引き起こされた。クォーツ時計の登場だ。この技術革新が原因で、それまで主流だった機械式の時計は一気に時代遅れとなり、スイスは国の柱である産業を失いかけた。

 しかし今では、スイスは世界有数のイノベーション立国として認知されている。そのきっかけを作ったのがスウォッチ社だ。世界的な時計ブランドとして誰もが知る「スウォッチ(Swatch)」は、スイス時計の市場を拡張すべく開発された。その共同発明者であるエルマー・モック氏は、超音波によるプラスチック成形技術を生み出し、それまで「高級」「重厚感」が基本であったスイスの時計産業に大転換をもたらした。

 モック氏は1986年にスウォッチ社と時計業界を離れ、現在は「プロの発明家になる」という目標を掲げて、Creaholicという破壊的イノベーションに特化したコンサルティング会社を立ち上げている。同氏は、スウォッチを発明した当時を「『必要性』は発明の母である。ゆえに革新は、危機の時代に起こる場合が多い。スウォッチもまた、スイスの時計産業が好調なら生まれなかっただろう」と振り返る。

 では、危機に陥らなければイノベーションは生まれないのだろうか。否、モック氏は「危機に陥る前にイノベーションを起こすことは可能であり、そうした方がずっと賢明だ」と語る。同氏が考えるイノベーションの定義とは何だろうか。

「新しいことを思いつき、常に新しいアイデアを持っている人は世界中にたくさんいます。しかし、イノベーションとは考えることではありません。新しい行動を起こすこと、新しい製品を創ること、新しいプロセスを生み出し、実践してこそイノベーションです

 現在、イノベーションと冠されているプロジェクトのほとんどは、実際は単なる「リノベーション」であると同氏は指摘する。目に見えている市場の要求を満たすだけでは、既に存在するものを改良しているに過ぎないという。

 もちろん、リノベーションは短期的なキャッシュフローを生み出すために重要だ。決して疎かにしてはいけない。しかし、イノベーションを起こせない企業では、中長期的なマージンが次第に減っていく。顧客は改善を求め続ける一方で、支出は減らしたがるからだ。また、競合他社も企業努力を続けているため、いつシェアを脅かされるかわからない。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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