パラドックスをチャンスと捉え、組織の進化と発展につなげるには
──関口先生が携わる「パラドキシカル・リーダーシップ養成講座」とは、どのようなものですか。
『両立思考』で紹介されている事例やツール等も活用しながら、これからのリーダーに求められる「パラドキシカル・リーダーシップ」を学んでいただく講座です。
といっても、単に講師陣が持っている答えを伝授するというものではありません。まだ研究途上であるパラドキシカル・リーダーシップについて、ご参加いただく企業の皆様と一緒に探求していきたいと考えています。
エスノグラフィの手法を用いることも特徴のひとつで、受講生の皆さんが自分の組織で直面している問題を題材にフィールドワークを行っていただきます。それを通じて、日本の組織や人に合ったパラドキシカル・リーダーシップとはどういうものなのかを考え、ディスカッションをし、新しい知を切り開いていきたいと思っています。
──パラドキシカル・リーダーシップを身につけることによって、どのようなことが可能になるとお考えですか。
これは私がよく使う図ですが、パラドックスがあるところにはテンション(緊張関係)が生じます。テンションは不快なので通常は避けたくなるのですが、ここにチャンスがあると捉えて受け入れ、パラドックス関係にあるものを離したりくっつけたりを繰り返してものごとを発展させていく、そういう組織マネジメントがパラドキシカル・リーダーシップによって可能になります。
ポイントは「動的平衡」という考え方で、どちらかに決めて固定するのではなく、あっちに行ったりこっちに行ったりを繰り返してバランスをとっていくということです。
特に経営者の場合、資源配分、組織デザイン、商品・サービスについての意思決定を揺らぎつつやっていくことで、創造と進化、持続的発展をさせていくことができる。その過程で組織自体も学習をし、柔軟性やレジリエンスが増していく、という全体像になります。