サービスが「売れるか」:課題性・受容性をミクロとマクロから検討する
まずは「売れるか」、つまりサービスコンセプトの部分だ。どのような顧客のどのような課題を、何の手法で価値へと変換するかという「新規事業企画」のもっとも重要な部分を占めている。
ミクロの列のすぐ隣にある項目では「マクロの視点」での検討をする。ユーザーセグメントや課題の一般性を検討するエリアだ。これはつまるところ、市場性の評価にあたる。BTCでいう「B=ビジネス」にあたる。
井上氏はこの「売れるか」を検討し項目を埋めようとすると、マクロの仮説がはっきりとしている一方、ミクロの視点が曖昧なことがあるという。どうしても分析的に考えてしまうからだ。こうした場合は、n1顧客のペルソナやユーザーインサイトを考える、つまりデザイン思考や人間中心設計などの発想で、ユーザー候補と会話をするのがよいと語る。
逆に、直感やミクロ視点の「あるある」から事業を生み出した場合、日本国内での潜在顧客数、あるいは世界展開をした場合の事業規模などを把握し、マクロな視点で事業性を評価する必要がある。
つまり、分析のみでは「机上の空論」、直感のみでは「木を見て森を見ず」という落とし穴に嵌まってしまうのだ。Value Design Syntaxを用いて、自分やチームの思考の偏りを把握し、弱みを補強するようにメンバーを増やすことが重要だ。この2つの思考の振れ幅がチームとして大きければ大きいほど、価値のある事業が生まれるのだ。
他のサービスに「勝てるか」:市場優位性と実現性を検討する
Value Design Syntaxが次に検討するのは「勝てるか」だ。
最初の「売れるか」で、サービスが提供する価値をはっきりと決められれば、競合を考えることができるようになる。とはいえ競合の定義は難しい。例えばKindleは他の電子書籍と完全な競合関係にあるが、時間を取り合っているという意味ではNetflixなどのストリーミングサービスも競合だと言える。まずは、どういったセグメントで、どんなサービスを競合相手・代替品とするかを定めることが重要だと井上氏は言う。
その上で、顧客にどう「フック」を掛け、どう「ロック」するのかという2つの戦略を考えることが重要になるのだという。特にサブスクなどのビジネスモデルでは、自社サービスが選ばれる理由だけでなく、選ばれ続ける理由をつくることが重要なのだ。
なお、井上氏はさらに「競合に勝つには、ビジネス、テック、そしてUI・UXなどのクリエイティブ、それぞれの面での勝ち方がある」と指摘する。例えば、SlackはUI/UXなどのクリエイティブ、Google検索はアルゴリズムの強さに代表されるテックで競合に勝っているといったようにだ。あるいは、DELLが受注生産方式を採用したように、ビジネスの切り口で差別化をすることもできる。自社のサービスがBTCのどこで優位性を確保するかを決めることが重要だと述べる。
競合の特定や差別化の手法が決まれば、その優位性を創るために、チームや仕組みを構築することができるか、という実現性の検討に入る。どういった自社リソースやパートナーリソースを活用して、どんな仕組みを組み立てるかまで考えていく。
その上で、より時間軸を拡張し、持続して事業を継続できるか、そして継続することでどんな資産が溜まり、競争優位をどう確固たるものにできるかを考える。