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Biz/Zineセミナーレポート

アイデアを集め事業化する“仕組み”の裏側──積水化学工業、リコー、富士通が語る「新規事業提案制度」

Biz/Zine Day 2024 Winter レポート:パネルディスカッション(積水化学工業、リコー、富士通)

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 2024年1月24日に開催された「Biz/Zine Day 2024 Winter」。本稿ではその中から「徹底討論!『新規事業提案制度』事務局運営のリアル」と題されたセッションの模様をお届けする。登壇したのは積水化学工業のイノベーション鈴木氏、リコーの森久泰二郎氏、富士通の斉藤一実氏だ。近年のイノベーション機運の高まりもあり、新規事業提案制度を設ける大企業が増え、実際に事業化する例も聞こえてきた。とはいえ、新規事業提案制度の実践者からは「事務局が疲弊してしまう」「職場の上司やメンバーに気を遣って応募できない」「応募件数が集まらない」といった声も聞こえてくる。新規事業提案制度の課題の乗り越え方について、登壇者が語る。モデレーターはイノベーション鈴木氏が務めた。

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積水化学工業、リコー、富士通それぞれの取り組み

イノベーション鈴木氏(以下、鈴木):まずは自己紹介とともに3社の取り組みについて簡単に紹介していきます。

 私は積水化学で新規事業創出に関連する3つのユニットを統括しています。社内の各ドメインのプロが集まって融合企画を創造する「企画創出」、社外の大企業・スタートアップと社内の研究開発部門・新規事業部門・事業部門をつなげる「オープンイノベーション」、そして今日の主題である弊社の新規事業提案制度である「C.O.B.U.アクセラレーター(以下、C.O.B.U.アクセラ)」の3つです。こういった制度を活用してイノベーションを産み出し、ひいては「イノベーションと言えば『積水化学』」という地位を確立したいと思い、日々活動しています。

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 積水化学は「Vision 2030」という長期ビジョンを掲げています。この実現に向けて、積水化学グループの全従業員を対象とし開催している社内のビジネスコンテストがC.O.B.U.アクセラです。ちなみにC.O.B.U.とは、Community Of Brave Unicorns(勇気を持って一歩踏み出すコミュニティ)の頭文字を取ったもので、自分たち自身はもちろん、積水化学グループで働くすべての人たちも「鼓舞」していきたいという気持ちが込められています。

 C.O.B.U.アクセラは、従業員が応募したアイデアをステージ・ゲート方式で選抜し、プロのメンターの伴走支援を得ながら1件/年の事業創出を目指しています。2023年度は、4〜6月にかけて206件のアイデア応募があり、20件が最初のステージを通過。7〜9月にかけて具体化に向けて徹底支援しています。その後、20件をピッチ審査し、3件を選抜。10~3月にかけて仮説検証をしています。3月にピッチ審査会を実施する予定で、最終的に1件に絞る予定です。2023年度から始まった制度なので現時点ではまだ事業化した案はないのですが、来年度は最終通過案をさらに徹底支援していく。そんなプログラムとなっています。

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森久泰二郎氏(以下、森久):私はリコーに入社後、設計者としてコピー機やカメラ、カメラ技術を使った工場自動化などに関わり、今は新規事業プログラム「TRIBUS」の運営事務局を務めています。ちなみにTRIBUSはリコー現会長の山下良則が社長時代に作った制度で、今も彼がプロジェクトのオーナーを務めています。

 TRIBUSは、社内からイノベーションを産み出す「IAP(イントレプレナー アクセラレーター プログラム)」と、「SAP(スタートアップ アクセラレーター プログラム)」の統合型アクセラレーションプログラムです。

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 このような統合形式のプログラムは、リコーが国内で初めて開催したのではないかと思います。2019年から運営を開始し、累計で社内からは378件、社外からは699社の応募がありました。新規事業として事業化した例としては、リコーからカーブアウトしたブライトヴォックスがあります。ブライトヴォックスは、経済産業省の「大企業等人材による新規事業創造促進事業(出向起業等による新規事業創造の実践)」を活用しており、代表の灰谷公良さんら4名はリコーに籍を置いたまま起業し、立体投影装置の提供をしています。

斉藤一実氏(以下、斉藤):富士通の斉藤です。私は新規事業創出プログラム「Fujitsu Innovation Circuit(以下、FIC)」を2021年11月から運営しています。これは端的に言うと、ビジネスアイデアを社内公募し、審査して投資するプログラムです。参加した人がなんの制限もなく全力で走れるように、信号も速度制限もない「Circuit」を付けました。

 FICは「(社内)文化を育てる」「人材を育てる」「事業を育てる」の3つを柱にして新規事業を産み出そうとしています。まず「文化を育てる」ためのAcademyステージでは、アントレプレナー教育で有名な米バブソン大学で教鞭を執る山川恭弘准教授に、3ヵ月のアントレプレナーシップの授業をしていただき3年で1000名を育成していきます。「人材を育てる」ためのChallengeステージは、Academyステージで学んだアントレプレナーシップを実践していく、「挑戦する人材」を育成するためのステージです。各分野の専門家の支援を受け、 3~6ヵ月間、工数の30%~100%を使い、実際に顧客の課題に向き合います。事業を産み出すプロセスを自ら学び、実践していってもらいます。最後に「事業を育てる」Growthステージでは、株式会社富士通ローンチパッドという、いわゆる“出島”の子会社に出向し、新規事業に挑戦してもらっています。

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この記事の著者

納富 隼平(ノウトミ ジュンペイ)

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