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意思決定のサイエンス

組織での意思決定の解像度を高める「ルールデザイン」──乗り越えるべき「4つの失敗パターン」とは?

【第4回・前編】ゲスト:東京大学先端科学技術研究センター特任講師 江崎貴裕氏

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 連載「意思決定のサイエンス」は、主に大企業における新価値創出について新しい時代にふさわしい実践的な思考法や行動原理について識者と共に紐解いていく。今回は『数理モデル思考で紐解くRULE DESIGN』(ソシム)の著者で東京大学先端科学技術研究センター特任講師、株式会社infonerv創業者の江崎貴裕氏を招き、組織運営やビジネスの問題を解決するための「ルールデザイン」のポイントを聞いた。

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「人が思い通りに動いてくれる」という前提が、様々な失敗を引き起こす

──まずは江崎先生の研究テーマからお聞きできればと思います。

 「集団現象」と呼ばれるのですが、個々の要素がたくさん集まったときに全体として何が起こるのかを分析する研究に取り組んでいます。対象は組織や社会であったり脳細胞であったりと多岐にわたるのですが、個人やニューロン単位では予測できないような複雑な機能が集団になると生じる、そのメカニズムを調べるんです。数理モデル思考は、それらの研究ツールとして利用しています。この研究領域は、集団現象というメカニズムに注目した学際分野と言ったらわかりやすいかもしれませんね。

──それらの研究でツールとして使われる「数理モデル思考」が、『数理モデル思考で紐解くRULE DESIGN』で解説されている「ルールデザイン」を考えるときにも役に立ったということですか。

 そうですね。この本を読んだ社会心理学の先生からは、「社会心理の研究者が書いているのかと思いました」と言われました。扱っている内容は社会科学的な現象なのですが、それを数理モデルという手段を活用して分析するとこうなる、ということだと思います。

──研究だけでなく起業もされ、データ解析技術を活用した社会実装にも取り組んでおられますね。そこでもルールデザインが活かされているのでしょうか。

 今は、自動化による物流システムの最適化について研究をしていて、起業した会社では自動発注システムを作っています。それらを一歩引いて見ると、新しい社会システムを作るということになるんです。単に自動でモノを動かして最適化するだけではなく、社会に調和するかたちで仕組みを作っていかなければいけない。そこにルールデザインの考え方を使う必要があります。

───そもそもなぜ、ルールデザインに関心を持つようになったのでしょうか。

 研究分野として「集団現象」というものを扱っていると、人が集まると思いもよらないことが起き、みんなが良かれと思って真面目にやっているだけなのに、結果としてすごく不幸になってしまうことが結構あるんですよね。人を思い通りに動かすということの難しさを感じていたことが、その理由の1つです。

 一方で世の中には、「なんでこんなルールが作られちゃったんだろう?」というようなことがたくさんありますよね。SNSで炎上してしまうような校則など、不思議なルールができるのはなんでだろうと考えたときに、ルールを作る難しさをみんなが知らないからなんじゃないか、と思ったんです。私からすると「そんなに思い通りに人が動くわけがない」と思うのですが、駄目なルールというのは、思い通りに動いてくれるという前提で作られているように感じました。

 そんなことから、「思い通りに人が動かない」という事例をたくさん集めて、そうならないためにはどうしたらいいのかを書いた「ルールデザインの教科書」があれば世の中が良くなるんじゃないかと考えるようになりました。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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