専門性の限界、対話の可能性に気づいた
野本:組織と戦略の両方を考えた時に人の問題にまで行き着くというのは、確かにそうだと思います。ただ、組織の中の一人ひとりの背景まで考えるということを、先生ほど大事にする研究者はなかなかいないんじゃないでしょうか。そこまで人というものに注目するようになったのはなぜですか。
宇田川:いろいろありますが、学術的な背景としては2000年前後にヨーロッパで始まった「プラクティス・ターン(実践的転回)」という動きがあります。元々、人文・社会科学の各領域で起きていた流れが経営学でも起きてきた。これは、人々が日常的にやっていることの中に、実は大きな社会的な構造が内在している、というような話です。