会議室(企画)の業務判断と現場の業務判断とは
冒頭で申し上げた通り、データインフォームドとは「判断」を行うために、データ“も”用いるというアプローチです。「データ“を”」ではなく、「データ“も”」と表現している通り、データだけで何かを決めるのではなく、個々人が培ってきた知識や経験、ノウハウなどの主観的情報に、客観的なデータを組み合わせていく、というところがポイントです。
つまり、データを見て気づきを得て、その気づきから物事を考え、判断しよう、というわけです。
日常生活はさておき、仕事においてこの「判断」が行われる場面は、大きく分けると「企画(会議室)」と「現場」の2つになります。この2つの判断業務領域を、それぞれDI(データインフォームド)にするということで、私たちはそれぞれ「企画のDI」「現場のDI」と呼んでいます。
「企画」とは、商品企画や業務設計、生産計画や在庫設計、販売計画や組織設計などの、数名~数十名程度の比較的少人数で考えて、決める場面です。
- 自社の営業担当者500名が、どの顧客を担当し、どれくらいの訪問頻度を目指すべきか
- 代理店経由でアプローチする顧客と、自社リソースでアプローチする顧客を、どのように峻別するか
- 在庫を、どの物流倉庫に、どの程度配置するのか
- 売れ残り品の割引ルールは、どのタイミングでどの程度値下げをすべきか(あるいは、しないべきか)
- 人員・組織の業績評価は、なにをKPIとして、どのタイミングで評価すべきか。給与等にはどう反映すべきか
こうした「判断」は、主に会議室において侃々諤々の議論を経て決定されていきます。その回数や頻度は決して多くはありませんが、ひとつひとつの判断が及ぼす影響は大きなものとなります。これが「企画」の判断です。企画のDIは、これらをDI化します。
一方、「現場」とは、営業現場や販売現場、工事現場や製作・製造現場などの、非常にたくさんの人が、ひとりひとりの判断に基づいて仕事を推進している場所・場面です。
- 百貨店の販売員が、目の前のお客さんに何をおすすめするかを決める
- タクシーの運転手が、どのルートを通って目的地を目指すのかを決める
- 家電の訪問修理担当者が、毎朝、どのくらいの在庫を車に積んでおくかを決める
- コンビニの店長が、どの商品をいくつ発注するのかを決める
こうした「判断」を、たくさんの人が、自律的・自立的に決めるという場面は、毎日、いたるところに存在します。企画業務に比べると、非常に多くの人が関与し、非常に高い頻度で判断が行われることになります。ひとつひとつの判断の影響範囲は限定的ですが、組織全体で見ると判断回数が非常に多いため、全体としての影響はとても大きなものになります。これが「現場」の判断です。現場のDIは、これをDI化します。