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なぜDXは“ゾンビ化”するのか──ビービット藤井氏に訊く、自社と顧客の理想的な状態を描く体験戦略とは

【前編】ゲスト:株式会社 ビービット CCO 藤井保文氏

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 本連載では株式会社ビービットCCOの藤井保文氏を連載ナビゲーターに、各業界の実践者や有識者との対談を通じて「アフターデジタル最新潮流」を探求する。連載第一回となる本記事では、連載ナビゲーターの藤井氏に国内外のDXやOMO戦略の最新動向についてインタビュー。前編となる本稿では、DXブームも一段落した現在、次なる時代のデジタル戦略の指針を聞いた。

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環境もツールもあるのに、なぜDXの成果が出ないのか

──本日はDXブーム以降のデジタル戦略についてお伺いします。まずは企業が抱える直近の課題についてお聞かせください。

 直近の動向としては、DXが投資回収フェーズに入りつつあると感じています。コロナ禍以前と比べると、各社ともDXの「環境構築」はかなり進みました。多くの企業が数十億、多い場合には数百億を投資した成果だと思います。

 ただ、2023年あたりからは「DXでどれくらいのリターンが得られたのか」という議論をよく耳にするようになりました。多くの企業がDXへの投資効果を検証するフェーズに移行しつつあるのかなと。

 そして、そのなかで、思ったように成果が得られていないと判明することが多々あります。DXの環境整備とは、主に「データ基盤の整備」「顧客接点の創出」「顧客IDの統合」「DX人材の獲得・育成」の4つですね。この4つはDXの「四種の神器」というか、その必要性が広く共有されているので、差し当たり多くの企業が取り揃えています。

DXの「四種の神器」
資料提供:株式会社 ビービット/クリックすると拡大します

 しかし、その4つを使って顧客とどのような関係を構築し、どのような体験を提供するのかという部分が曖昧なために成果を得られていないケースがかなり多い印象です。よくあるのは「データは収集できているが、どんな施策に使えばよいかわからない」というパターンですね。他のコンサル会社などからも、こうした状況に陥っているクライアント企業は多いと聞きます。

企業に求められている「自社と顧客の理想的な状態を描くこと」

──DXが「環境整備」で留まってしまうことが課題だと。

 はい。ただ、多くの場合、明確に定義できていないだけで、顧客に提供したい体験や実現したい世界観は大まかに持っているわけです。

 例えば、大企業であれば、複数の事業間やグループ会社間の連携を強化して、クロスセルやLTV向上を進めたいと思っています。あとはOMOの実現ですね。コロナ禍の影響もあって、ECをはじめオンラインで顧客接点を持つ企業は急増しました。オフラインの顧客接点も回復しはじめた今だからこそ「OMOを実現しよう」という機運は高まっています。

 実はこの二つのニーズに対するソリューションは、米国では「ジャーニーオーケストレーション」というコンセプトにまとめられ、すでに一般化しています。

 ジャーニーオーケストレーションとは、オンライン・オフラインを問わず、複数のサービス間を顧客が行き来できる環境とそのシナリオを構築することです。例えるなら、マーケティングオートメーションをLTV向上目的やより広い事業規模で行うで行うイメージでしょうか。これを実践すればOMOや事業間でのクロスセルなどは実現します。しかも、ジャーニーオーケストレーションの機能を備えたCDP(Customer Data Platform)の製品はすでに存在していて、米国を中心に定着し始めています。

ジャーニーオーケストレーション
資料提供:株式会社 ビービット/クリックすると拡大します

 つまり、多くの企業でDXの環境は整っていて、それを実現するためのコンセプトや製品も存在している。それにも関わらず、なぜDXの成果が得られていないのかといえば、顧客との関係構築や顧客体験への考察が十分ではないからだと思います。環境や道具は揃っていても、それらを何に使えばよいか明らかでないと成果は生み出せないからです。

 なので、今、DXに取り組む企業に求められているのは「自社と顧客の理想的な状態を描くこと」だと思っています。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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