KDDIが描くモビリティ社会の未来
セッションのはじめに相澤氏は、KDDIのモビリティ戦略について詳述した。冒頭で相澤氏は5Gを中心に据えたKDDIのアプローチがモビリティ社会の進化において重要な役割を果たすことを強調した。5Gは、「データドリブン」「生成AI」とともに、KDDIが推進する「サテライトグロース戦略」の中核に位置している。それらを活用することで、モビリティをはじめ各領域での事業拡大を進めようとしている。
この戦略の象徴的存在がブランド「WAKONX(ワコンクロス)」だ。AIを活用したビジネスプラットフォームであるWAKONXでは、モビリティや小売、物流など、業界別に最適なソリューションを提供している。相澤氏は「お客様が個別に投資が難しい協調領域に対し、KDDIは共通的なプラットフォームを提供している」と述べ、WAKONXが担う役割を説明した。
特にモビリティ分野では、コネクティッドカーの普及が急速に進んでおり、KDDIでは、現在2800万を超えるIDを管理している。年内には3000万IDに達する見込みであり、これは日本のスマートフォンID数を超える規模だという。
KDDIのコネクティッドカー事業は、国内にとどまらず、グローバルにも展開している。相澤氏は、グローバル通信プラットフォームを構築し、日本、北米、中国、欧州など各地域で統合的に管理することで、各国の通信キャリアをシームレスに接続し、顧客に単一のインターフェースで管理を提供していると語った。たとえば、日本で製造された車が北米で使用される際、現地の通信キャリアに自動的に切り替わる仕組みを実現しており、これがコネクティッドカーのグローバル展開を可能にしている。
また、KDDIはIoTにも注力している。IoT事業は、2000年に車の盗難防止や低容量通信から始まり、2014年には電力のスマートメーターの普及によってID数が急増。その後もガスのスマートメーターやグローバル通信プラットフォームの展開によって成長を続け、現在では5000万IDを超えている。2030年には1億IDに達する見込みであり、同社のIoTビジネスがいかに急成長しているかを物語っている。
こうした成長を支えるため、KDDIは新宿を拠点に、ホーチミン、ロンドン、北京、テキサス、ストックホルムといった海外拠点を整備し、グローバルな運用監視体制を強化している。特にテキサスの拠点設立は、米国市場での事業展開を強化するもので、世界規模での運用体制構築が進んでいることを示している。