「人」と「車」のデータを軸としたビジネスモデル
元垣内:では、そうした理念によって、御社はCaaS領域でどのようなサービスを生み出されているのでしょうか。
中津川賢人氏(以下、中津川):先ほど山畑が申し上げたように弊社では「人」と「車」、2つの観点からデータから適切に評価すれば、より適切な還元ができ、誰にでも最適なカーライフを届けられるはずだと考えています。
そこで、既存の金融機関の審査に落ちてしまう方に、まずレンタカーから乗っていただくサービスを提供しています。そこで一緒に信用を貯めていくことで、本来欲していた新車に乗れますよ、というのが我々の「ノレル」のサービス設計ですね。このレンタカーに乗っていただく期間を、我々は「伴走期間」と呼んでいます。
元垣内:ユーザーに寄り添いながら信用を貯めていく期間ですね。
中津川:その通りです。「ノレル」ではこの伴走期間を通じて、支払いデータや運転データだけでなく、その方の家族構成や日頃の生活についてなども細かくヒアリングして、「この人なら大丈夫だろう」と統計的に証明できる要素をたくさん見つけていくことになります。
また、車についても基本的な車両情報に加えて、定期的な点検を通して外装や内装の状態などをチェックして細かくデータを集めます。そのデータをオークションでの取引データと照合して、その車に今どのくらいの価値が残っているのか、将来的に価値がどう推移していくのかを、機械学習・AIを活用しながらできるだけ正確に予測することで、ニーズの少ない車はどんどん市場に放出していくといった対応もしています。
元垣内:なるほど、おもしろいですね。とにかくデータが集まるほどサービスの品質に反映されるモデルなのだと思いますが、現状、「ノレル」はどのくらいのユーザーを抱えているのでしょうか。
中津川:累計で3万人以上のユーザーがいて、それがそのまま「人」のデータとなっています。一方の「車」のデータに関しては、過去の売買データもあるので数百万以上のオーダーになります。こうしたデータを自社のデータサイエンティストのほか、外部パートナーの力を借りながら、収集と分析を繰り返している状況です。
元垣内:既に大きな規模でデータを蓄積されているのですね。このビジネスは信用ベースであり、実は意外とリスクが低いという側面も見逃せません。
山畑:まさにそうです。たとえば親戚や仲の良い友人であれば、気軽に自分の車を貸しますよね。そのイメージに近いかもしれません。
元垣内:そうしたデータを基にした与信事業としても可能性がありそうですね。
山畑:そうですね。実際に別業種の方から、カーリースのサービスを自社のサービスとセットで提供したいというニーズがあった場合、我々が裏側でサービスを運用するような例もあります。あるいは車両販売業の方でも、申し込みはたくさん来るけれど審査で落ちてしまう顧客が多いという場合、我々がレンタカーの貸出で間に入り、信用情報が貯まったところでその企業にお戻しするといった連携もあります。