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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

「挑戦が当たり前の企業文化」を目指す富士通の取り組み──運営者に聞く“学び”と“実践”の場づくり

第2回 ゲスト:富士通 斉藤一実氏、川口紗弥香氏、殿村亜希氏(前編)

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社内起業に合わせた支援体制と“コスパ以上”の支援

イノベーション:FICの活動を支える試行錯誤についてもお聞きしたいと思います。特に、他社では文化醸成や人材育成、投資などの役割がそれぞれ別部署で行われるところも多いですよね。

斉藤:そうですね。たとえば、文化醸成は人材開発部門、人材の挑戦を実行に移すための審査や投資はビジネスマネジメント部門が担当するといったように、それぞれの専門部署で進めるのが一般的です。富士通にではこれらすべてを1つの部署で行うことにしM&A主体の投資部門に集めました。非連続成長を目指す新規事業創出プログラムとして、こうした体制が不可欠だったからです。

 ただ、すべてを1部署で担うことで、思わぬハレーションも生じました。たとえば、M&Aのようにデューデリジェンスを重視する案件と、社内起業のアイデア審査では評価基準がまったく異なります。そこで、教育やトライアル段階のプロセスを切り出し、成果を生み始めたアイデアは富士通ローンチパッドや社内ベンチャーとして次のステージに進むという組織的にも段階的な運営へと改善しました。このように試行錯誤しながら、少しずつ実効性を高めてきました。

イノベーション:M&Aと新規事業創出プログラムでは「ゲームが違う」難しさがあったのですね。社内起業に最適化した運用を試行錯誤されてきた点が興味深いです。

川口:まさにおっしゃる通りで、FICでは目的に合わせて施策を改善し続けています。その一環で、過去には「Academy」と「Challenge」の2つだったプログラムを24年度から改編しています。従来の「Academy」では挑戦するマインドセットを育む講座を主軸にしていましたが、加えて事業創出に必要なスキルや思考法を育てる内容を強化した「Ignition」へと進化させています。

イノベーション:「Academy」には学びたい意欲の高い社員が集まっていると伺いますが、そこから実行に移せる工夫も取り入れられているのですね。

川口:はい。特に、行動へつなげる仕掛けを増やしています。たとえば、「Challenge」まで踏み切れない社員向けには、社外との短期ワークショップを開催するなど、とにかく“打席”を増やしています。また、ときには個別に声かけをして一歩踏み出す後押しもします。手間はかかりますが、その少しの後押しで挑戦する社員が確実に増えています。

イノベーション:私も個別声かけはコストがかかるものの、長期的な視点ではアントレプレナーシップ人材の成長や意識改革に効いてくる感覚があります。こうして地道な支援や試行錯誤を重ねた分だけ、FICならではの実効性ある支援が形になっているんですね。後編では、FICプログラムの具体的な成果や、目指すビジョンについてもお伺いしたいと思います。

積水化学工業株式会社 新事業開発部 イノベーション推進グループ長 イノベーション鈴木氏
積水化学工業株式会社 新事業開発部 イノベーション推進グループ長 イノベーション鈴木氏

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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