ユーザーとのテストで「人間中心の原則」を維持できる
プロトタイプができたら、ユーザーと一緒にテストをしよう。テストはデザイン思考の特徴である人間中心の原則を最もよく表現するパートだ。ユーザーにプロトタイプへ関わってもらうことで、解決策が洗練されるのはもちろん、ユーザーに対するより深い共感を得ることができる。
テストをする際には、以下の役割を設定する。
1)ホスト役
ユーザーに対して、状況設定を簡単に説明する。
2)プレーヤー
ユーザーに具体的な経験を提供するために、ストーリーにそって役割をこなす。例えば、新しいレストランサービスのプロトタイプをつくったのであれば、お客さん役であるユーザーをもてなす店員役となる。
3)記録係
ユーザーの行動や反応を客観的に観察して記録する。記録係を用意できない時は、ビデオで撮影するようにしよう。
以上の役割を設定したら、次の手順で実際にテストをしてみよう。
1) プロトタイプを経験してもらう
プロトタイプを手渡すか、サービスであればプロトタイプ空間へユーザーを招き入れる。ユーザーが何をするのか最低限わかる範囲でホスト役が説明を行おう。ユーザーから自然な反応を得られるよう、過度に詳細を説明することは避ける。
2)観察し、記録する
ユーザーがプロトタイプをどう使っているか、その様子を観察する。仮にチームが意図しない使い方をしていても、誘導しないで様子を記録しよう。
3)ユーザーの体験を聞く
一通りプロトタイプを体験してもらった後に「利用してみてどう思いましたか?」とホスト役が質問を行う。なるべくオープン・クエスチョンを使い、ユーザーが自由に発言できる環境を作ろう。ユーザーの発言をさらに掘り下げ「なぜそう感じたのか?」とユーザーを理解することに努めたい。
プロトタイプを使ってテストを行うことで、人間中心の原則を維持しながら価値ある新たな解決策を創造することが可能になる。最初はうまくいかないことが多いかもしれないが、何回もプロセスを繰り返すことで要領がわかるようになる。
本稿内の出典・参考文献は以下にまとめます。
- スタンフォード大学d.school 『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』一般社団法人デザイン思考研究所編
- 同『はじめてのデザイン思考プロジェクト』柏野尊徳訳
- IDEO.org『イノベーションを起こすための3ステップ・ツールキット』一般社団法人デザイン思考研究所編.