デロイトトーマツグループは、労働市場の供給面に着目し、GX(グリーントランスフォーメーション)人材の市場規模を推計するとともに、キャリアの志向性やリスキルなどの実態および課題を明らかにする「グリーントランスフォーメーション人材調査」を実施した。
日本の労働市場におけるGX人材の規模
2024年5月に全国の20~50代のフルタイム就業者13万1970人に対してスクリーニング調査を行い、そのうちGX関与領域においてGX職種に従事する人材4017人を「GX人材」と位置づけ。
性別・年齢構成比が実際の日本の労働者と同一になるように回答者の属性別割合を補正したうえでGX人材の出現率を推計すると8.5%となり、日本の就業者人口約3000万人のうち、254万人にとどまっていることがわかった。
今後のGX関連業務への関与意向も56.7%にとどまる
GX人材の平均年収(管理職:952万円、非管理職:600万円)は、非GX人材の平均年収(管理職:903万円、非管理職:531万円)よりも、管理職で49万円、非管理職で69万円高い。
その一方で、今後もGX関連業務に関わりたいと考えるGX人材は56.7%と半数程度にとどまっている。GX人材は8.5%と元々限定的であることを踏まえると、さらに人材の割合が低下する可能性がある。
他方、若い年代ほどGX人材の割合が高いことから、だんだんとGX人材が社会に輩出される仕組みが整いつつあることがうかがえる。
DXでは人材の確保にあたり、高い報酬や柔軟な働き方などを整える企業の動きがあるが、GXについても、企業が重要な人材であることを明示するとともに人材を特定・把握し、より高い報酬などの目に見えるインセンティブ強化を行うなど、さらなる認知および魅力度の向上を図る必要がある。
GX人材はワークライフバランスや柔軟な働き方を重視
GX人材の仕事に対する価値観や魅力的と感じる会社・仕事について質問したところ、「仕事とプライベートは、別々に分けたい」が75.0%と最も多く、次いで「社員全員の総合力で成長する会社」が74.7%、「キャリアや能力の開発機会は、自分自身が社内外でのチャンスを求めるものだ」が74.6%と続いた。
全体傾向として、GX人材は挑戦機会や専門性を追求しつつも、ワークライフバランスや柔軟な働き方を重視することがうかがえる。企業がGX人材の志向性を理解して就労環境を整えることも、今いるGX人材の活躍を推進し、さらに人材を増やしていくうえで重要であるという。
GX人材は領域をまたいでリスキルを実施
今回の調査においてGX人材は、電動自動車・蓄電池などの領域に最も多く(2163人)、次いで風力・太陽光・地熱(1135人)の領域に多かった。
同じ産業の中でも、研究開発フェーズにある領域では理系職種の割合が高く、事業開発フェーズにある領域では企画・営業職などの文系職種の割合が高い傾向にある。
たとえばエネルギー産業において、風力・太陽光・地熱の領域では、文系職種が理系職種の割合よりも高いのに対して、次世代熱エネルギーの領域では、理系職種が文系職種の割合よりも高い。
理系GX人材によるGX業務従事後のリスキル分野は、数学・素粒子・宇宙系(36.3%)、バイオ工学系(31.5%)が特に多く、最終学歴の学習分野に限らずリスキルが行われている。
GX人材は文系・理系ともに、リスキルなどにより専門領域を移り変わる可能性がある。自社の業種がどのフェーズにあるのか、今現在どの領域に文系・理系のGX人材がいるのかを理解することで、採用活動などにおいて、領域をまたいで人材を循環できる可能性がある。
また、人材の循環を促すうえで、業務に従事しながらリスキルできる環境を整えることも必要であるという。
調査概要
- 調査形式:Webアンケート方式
- 調査時期:2024年5月1~8日
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調査対象:13万1970名(スクリーニング調査)、5128名(本調査)
- 全国の20代~50代のフルタイム勤労者
- 高等学校卒業後、大学以上の教育あるいは専門的な職業訓練を修了した者
- 会社役員、会社員、公務員・団体職員、契約社員・嘱託社員、自営業・フリーランスに該当する者
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