先進企業が注力する「組織文化」とは
「組織文化」が注目される背景
近年、「組織文化」への注目が高まっています。
年次の統合報告書を開けば、多くの企業が組織文化に言及しています。企業文化や組織風土、カルチャーなど、企業ごとに表現は異なりますし、そこに占める分量も様々ですが、この傾向は、組織文化を語らずして経営戦略を語れない時代だということを表しているのではないでしょうか。
人事組織をPeople & Cultureと呼ぶメルカリ、人とカルチャーの変革に取り組むピープル&カルチャー部門を置くNECなど、人事を担う部門を「ピープル&カルチャー」と呼んでいる企業も増えています。人や組織がその企業の強みの根幹にある企業は、「カルチャー」を組織の中核に据えています。
他にも、率先して組織文化の変革や醸成を担う役職としてチーフ・カルチャー・オフィサー(CCO)を置く、みずほフィナンシャルグループやfreeeなどの企業もあります。
一方で不正や不祥事の背景に組織文化が認められるケースもあります。
ビッグモーターによる故意に車体を傷つけての保険金の水増し請求、日大アメフト部での違法薬物使用と学校側のガバナンスの機能不全、日野自動車によるエンジン認証に関する不正行為など。
こうした事件もまた、組織文化への関心が高まる一因だと考えられます。
組織文化とは何か
そもそも「組織文化」とは何なのでしょうか?
組織文化について、このように思う方がいるかもしれません。
- 懇親の場を増やして、コミュニケーションを活発にしさえすれば組織文化は良くなる
- ひとつの強い組織文化を作れば、企業として強くなれる
- 組織文化なんて変わらない
これらはすべて、組織文化への誤解です。いずれも「文化」についての定義や理解が曖昧なために、このような捉え方になってしまっています。
そこでまず、文化について簡単に説明したいと思います。
文化とは人にどんな影響を与えているのでしょうか。下図のように、人間には感じ方や考え方、行動に影響を与える3階層の“プログラミング”があります。
一番下の層は、人間という動物に備わっている「人類共通」の部分。「お腹が空いたら食事をしたい」「眠くなったら寝たい」といった性質です。
一番上の層が「個人」。人間は約99.9%が同じ遺伝子ですが、残りの約0.1%は異なる遺伝子です。また、異なる経験と異なる才能を持っています。
そして真ん中の層が「文化」です。人間は社会的な動物で、所属する集団の中でうまく生きていくためのふるまいなどを習得します。個々の会社や団体などに特有のルールや慣習などが組織文化であり、この真ん中の層に含まれています。組織のメンバーは組織文化から影響を受け、考えたり動いたりしているのです。