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『イノベーションのジレンマ』早わかり講座

翔泳社・日立製作所共催「ビジネスブックアカデミー5月19日」

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ハーバードビジネススクール教授クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』を、INDEE社の津田・津嶋コンビがざっくりと解説した。

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タイトルINDEE 津嶋 辰郎、 津田 真吾

こんにちわ、INDEEの津嶋と申します。学生時代に、鳥人間コンテストという自作の飛行機を作って競う大会に出るチームを作り優勝したのがきっかけで、その後レーシングカーの開発や半導体ベンチャーのスタートアップなど、エンジニアリングの世界でいろんなチャレンジを続けてきました。そうした中で、新しいアイデアがあっても、事業に結びつかないという問題やいろんな困難な経験を味わいました。まさしくそういった時にクリステンセン教授のイノベーションの理論に出会って、この考え方こそが自分の悩みに応えてくれると思ったのです。

津田ともうします。私は元々、IBMでハードディスクの研究開発からキャリアをスタートしました。本を読んだ方はご存知かもしれませんが、『イノベーションのジレンマ』という本は、まさにこのハードディスク業界の変化に関する調査から理論を導いているんですね。私自身その業界に身を置き危機感を感じていたこともあって、この本を読んだ時ものすごく衝撃を受けたのです。それがきっかけでiTiDコンサルティングを経て、先ほどの津嶋と一緒にINDEEを始めたというわけです。

帆船と蒸気船、ダ・ビンチとエジソン

クリステンセンといえばハーバードビジネススクールの教授ですが、ご存知のように、ハーバード大学は、アメリカの東海岸のボストンにあります。ボストンというのは東海岸で、昔はヨーロッパからの玄関でした。初めて白人が新大陸を発見して、上陸した場所で、非常に大きな港があって、ヨーロッパの交易で栄えてきた町です。当時、こういう帆船が交通機関として繁栄していたわけです。往復何度もするので。製品開発の発展という意味では、帆船の帆を増やして早くするという方法が激しく行われたわけです。その果てに蒸気機関が登場することによって帆船の競争というものが無価値、無意味になってしまったのです。

これがイノベーションです。「蒸気機関のほうが帆船より早いから」という理由は、後になってからの理由であって、その当時の蒸気機関は、帆船より遅かったのです。しかも重い石炭をいっぱい積まなければいけないわけですから、あまり遠くまで運べず、最初の蒸気船はヨーロッパまでは行くことができず近海だけでした。その後、蒸気船の業者が、徐々にスピードを上げていって帆船を駆逐していったのです。

このことから言えるのは、生まれたばかりの「たいしたことない技術」を軽視するなということです。 われわれ日本人は技術主導のビジネスが強かったということもあり、初期の技術に対しては厳しすぎる傾向があります。初期の蒸気機関のような「しょぼい」、「いけてない」技術にもっと目を向けていって良いと思います。

次に、イノベーションの本質についてのお話をします。二人の偉人の例を上げましょう。一人はレオナルド・ダビンチ。医師でもあり画家でも様々な活躍をした人。もう一人はエジソン、GEの創立者とも言われており、発明家として有名です。ここで参加者の方に質問です。この二人の大きな違いは何か、一言で言えますか?

(会場)ダ・ビンチは芸術家。エジソンは実際に作った人。

その通りですね。エジソンは、実際に作って後世まで影響を与えたという意味で、イノベーションを起こした人と言えます。アイデアだけではなく、なにか新しいものによって産業や社会にインパクトを与えるまでに行き着いたものこそがイノベーションだということです。アイデアが発展して、普及して初めてイノベーションとなる。
ですから、日本ではイノベーションは技術革新と訳されることが多いのですが、技術によって新しいものを作るだけでは、「インベンション=発明」です。イノベーションを語るときは、普及ということ、それが世の中を変えるというフェーズまで達しているかどうかということが本質です。

「イノジレ図」を頭に入れよう

この図がイノベーションのジレンマの中心的なコンセプトです。ジレンマの続編のイノベーションの解などにもよく出てくるものです。われわれは「イノジレ図」と読んでいます(笑)。この図はぜひ理解してください。
企業活動というのは、けっこう改善の積み重ねですね。昨日よりも、明日、来年の方が良い製品を作る。どんな会社もこういう地道な努力をおこないます。これを「持続的なイノベーション」と呼びます。これをやらない会社はありません。 
ところが、会社というのはその製品やサービスにおいてプロですから、実はお客さんが必要なレベルというものをどこかで超えてしまうのですね。お客さんもある意味で、非常に要求の高いお客さんもいらっしゃれば、そうではなくて「適当で良いよ」、「必要十分であれば良いよ」というお客さんもいます。こういうお客さんのニーズを大半の会社は、追い越してしまうのです。
追い越した後しばらくは、積み重ねた付加価値でトップ企業として勝ち続けます。ところがある時、先ほどの蒸気機関のようなものが現れて、ある特定の例えば、近海の航法というような特定の分野で活躍を始めます。
そうすると、こうしたビジネスが一気に市場を作り普及してしまう。である程度仕事が回りだ、すと、売上が伸び出します。そうするとそれまでの、平均的なお客さんが、それまでTo Muchだと思っていたトップ企業から離れて、遅くても良いから少し安い蒸気機関に乗ろうと思い乗り換える。こういう転換のポイントが、どこかで置きます。
そのポイントを過ぎた右側では、その新参者が勝つということになるし、それより左は通常の改善を積み上げてきた従来の改善の企業が勝ちます。 業界の大きな動きだけ見ていると、ある時パラダイムが変わったと感じてしまうわけですが、10年、20年といった企業活動の改善を見ていくと、この兆候というものがわかります。

青いラインが通常の大企業で、それに対して破壊をしかけ、登場するのが赤い線のベンチャーです。登場した時は顧客の満足を全然得られない。初めは誰も着目しない。それを放って安心しているといつのまにか、顧客の求める水準を超えるようなラインがくる。そこからあせっても、もう遅いわけです。大企業は、破壊系をしかけるベンチャーの出現をいかに早くモニタリングして、ビジネスを検討していかないといつかパラダイムを変えられてしまう。このことに警告を発したのがクリステンセンです。

『イノベーションのジレンマ』は元々は、大企業のための目線で書かれています。大企業は、なぜいつもやられてしまうのかを研究している本です。ところがこの本を、シリコンバレーのリーダーたちは「どのように大企業をやっつけるか」という見方で読んだ。スティーブ・ジョブズが唯一愛読したビジネス書とも言われていて、アマゾンのベゾスも読んだと言われています。日本でももう少し読んでいただきたい、というのが正直なところ。 大企業から見れば、いかに自分たちの事業を新しい企業から守るか、ベンチャーや新規事業をおこなう側からみると、いかに既存の企業を破壊するかという、その双方の断面からみることができるのです。

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破壊的イノベーションによる戦略

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