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AIは空気を読まない、経営者は「変曲点」を読め──山口周氏と語る、これからのリーダーに求められる条件

ゲスト:独立研究者 山口周氏、株式会社ログラス 代表取締役 執行役員CEO 布川友也氏

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コンサルタントはどのようにAIに代替されるのか

山口:私は理論物理学に詳しいわけではありませんが、伝記などを読む限り、アインシュタインはデータの積み上げの先に相対性理論を導いたというよりも、「光の速度で光を追いかけたらどうなるのか」という問いを出発点にして、検証を進めていったようです。

 これはコンサルティングのプロセスにも重なると思っています。コンサルティングファームでは、コンサルティングのプロセスとして、「1:論点設定」「2:仮説構築」「3:データ収集」「4:分析・統合」「5:結論・アウトプット」「6:実行」というフレームが用いられます。

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 このなかで、AIが得意なのは「4:分析・統合」と「5:結論・アウトプット」です。「3:データ収集」は、Web上の二次情報収集は得意ですが、世の中の人々が交わす会話やその場の空気感といった「一次データ」の収集はまだ課題が多いです。そして、「1:論点設定」「2:仮説構築」はとりわけ得意ではない。

 そう考えると、人間に残される仕事は「1:論点設定」「2:仮説構築」と、仮説検証のプロセスを含む「6:実行」です。最近、マッキンゼーやBCGが若手コンサルタントの人員配置を最適化しているという話を聞きますが、若手のアナリストが主に担当するのは「4:分析・統合」「5:結論・アウトプット」ですから、当然の流れにも思えます。

布川:投資銀行業界でも同様の動きがあるようですね。私自身も証券会社の投資銀行部門の出身なのですが、若手バンカーにはPowerPointやExcelを一日中にらみ続けている、アウトプットを専門にする人員がたくさんいました。その作業を自動化するファイナンス向けLLMの開発をOpenAI社やAnthropic社が進めているそうです。

 また、エンジニアの世界では既にAnthropic社が「Claude Code」をリリースして、世界を席巻しています。Claude Codeは、開発したい機能や設計の概要を投げると、自動的にコードを書き上げることができるAI Agentです。

 こうした開発が可能なのは、投資銀行にせよエンジニアリングにせよ、「変数が限定されたゲーム」の傾向が強いからでしょう。プロダクトの開発は設計書に記された情報に従って進められますし、投資銀行におけるモデリングも財務情報などのある程度閉じた情報をもとに行われます。言い換えると、コンテクストに左右される領域が少ないわけで、だからこそAIによって代替しやすい。

ボトルネックがどのように移動するかを予測する

山口:つまり、今、AIを巡って起きていることは「産業革命」なのです。18世紀半ばから起こった第一次産業革命の歴史を見ると、技術革新により産業のボトルネックが次々と移動していったことが分かります。

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 第一次産業革命の発端となったのは繊維産業です。大まかに繊維産業のプロセスは、「1:綿花の収穫」「2:綿ぐり」「3:紡績」「4:紡織」「5:裁断・縫製」ですが、第一次産業革命ではまず紡績機の発明により「3:紡績」の生産性が飛躍的に高まりました。

 しかし、それで繊維産業全体の生産性が伸びたわけではありません。プロセスの一部の生産性が上がっても、他のプロセスが追いつかなければ仕掛かり在庫が増えるだけです。第一次産業革命では、その後、時代を経て力織機(りきしょっき)やミシン、化学肥料が生まれ、繊維産業が急拡大していきました。その過程では、産業のプロセスにおけるボトルネックが移り変わり、それを解消した人物が巨万の富を得ていったわけですね。

 こうした歴史を踏まえても、今後、AIによって産業のどのプロセスの生産性が高まり、ボトルネックがどこに移動していくのかを注視する必要があるのだと思います。おそらくAI自体の覇権を誰が握るかというゲームは初期段階の勝負はついています。ならば、次のフェーズに目を向けるのが賢明な判断なのでしょうね。

Loglass AI Agents
■Loglass AI Agents for Corporate Finance(略称、Loglass AI Agents)の「特設ページ」へ

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ログラス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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