新規事業用語を徹底して「伝わる言葉」に翻訳する
イノベーション:科学的なアプローチの一方で、現場の社員を巻き込む上での「泥臭い」工夫もされているとか。
遠藤:はい。新規事業って、どうしても横文字が乱立してしまいますよね。「PMF」とか「PoC」とか。でも、これらは現場の社員にはまったく通じません。以前、私がメンターについたチームから転送メールで相談が来たことがあって。当時入っていたコンサルの方が「アジェンダをポストしてください」というメールを送っていたのですが、現場の社員は「これ、何を対応すればいいんでしょうか?」と。
イノベーション:「アジェンダをポスト」……(笑)。確かに、普段の業務では使わない言葉ですからね。
遠藤:そうなんです。業務の中で使わない言葉で思考のキャパシティを奪ってしまう前に、まずやるべきは言葉のハードルを下げることだと。ですから、徹底的に日本語に「翻訳」しました。「プロブレム・ソリューション・フィット」のような難しい言葉は使わず、「問題の検証」「買われるかの検証」「拡大するかの検証」といった具合に、誰にでも直感的にわかる言葉に変えました。
イノベーション:これは他の会社も参考にしたほうがいいですね。私も「社内でカタカナをなくせ」とはよく言いますが、ここまで徹底して制度設計に落とし込んでいる例は稀です。
遠藤:「これ何ですか?」という問い合わせが多いのは、制度の欠陥なんです。「PMFって何ですか」と聞かれる時点で、制度設計が優しくない。そこを直すだけで、応募者体験は大きく変わります。
現場の「時間がない」を「本社の研修化」で解決する
イノベーション:今回、応募増の大きな要因として「地方巡業」を挙げられていましたが、具体的にどのようなことをされたのでしょうか。
遠藤:地方巡業自体はどの会社さんもやられていると思いますが、私が今まで以上に強く感じたポイントは、「提案に向けた現場の最大の課題は『時間がない』こと」という点です。現場の業務は分刻みで組まれていて、マイクロ業務が積み重なっています。急に「新規事業を考える時間を追加してください。または捻出してください」と言っても基本的に難しいのはどの業界でも一緒だと思います。
イノベーション:確かに。通常業務だけで手一杯ですもんね。
遠藤:そこで、地方巡業を単なる説明会やビラ配りではなく、「3時間の研修パック」として実施しました。本社主催の研修として現場社員のカレンダーに会議招集をさせてもらい、業務から離れて新規事業を考える“真空”時間を作らせていただきました。その結果、移動も含めて新規事業漬けになるような状況を作り出すことが実現しました。
イノベーション:なるほど。業務時間外にやるのではなく、業務時間内に「研修」として枠を確保したわけですね。
遠藤:そうです。「本社からの業務」となれば、「参加したい」と思っていた社員にとっては手を挙げやすくなりますし、そうした担当社員の思いや自発的な行動に対して支援するスタンスの管理職が大変多いのが当社の強みです。実際、研修として支店に通達すると、「実はやりたかったんです」と手を挙げ参加いただけるケースが非常に多かったです。
