応募はテキストのみ。パワポの提案書をやめたことで数と質が向上
イノベーション:もう1つ、提出フォーマットをPowerPointからテキストに変えた点もユニークですね。
遠藤:はい。これまではパワポで図解を含めた資料作成を求めていましたが、今年はテキスト入力だけで完結するようにしました。アンケートで一番評価が高かったのがこの変更です。現場の社員は、たとえCADが使えたとしても、パワポを日頃から業務で触ることはさほど多くないんです。「図が苦手だからやめておこう」と思われてしまい応募を断念するという状況は本質的ではないですよね。
イノベーション:図が描けないから諦めるというのは非常にもったいない機会損失です。
遠藤:テキストにしたことには、もう1つ大きなメリットがありました。「事前提出」のハードルが下がったことです。テキスト完結のため運営チームの確認コストも低減できます。そこで「早く出してくれれば運営チームがフィードバックしてブラッシュアップできますよ」と伝えたところ、応募締切の80日前に約50件、30日前の段階で約200件近く集まりました。
イノベーション:それはすごい! 普通、締切前の1週間で9割の応募が来るから、事務局は最後までハラハラドキドキするものですが。
遠藤:1ヵ月前から前年の2倍の件数が集まっている状況で、運営チームは最後の仕上げの支援や集客施策の検討に時間を割くことができる。応募者側も、事前に「ここがダメだよ」「ここはこう考え直して」とフィードバックを受けられるので、納得感を持って質を高められます。テキスト化と事前提出、そしてフィードバックのサイクルが回ったことが、344件という数字の向上に直結しましたし、内容についても質が向上したと感じています。
AIは「思考の壁打ち」と「フィードバックの効率化」に徹底活用
イノベーション:生成AIの活用について教えてください。最近はどの企業も導入を進めていますが、大東建託さんではどのようなルールで運用されていますか?
遠藤:事業案の作成に生成AIなどをフル活用させていますが、あえてプロンプトは配布していません。使える人は自由に使っていいですが、プロンプトを渡してしまうと、本人の思考力以上のものがアウトプットされてしまい、「思考の代行による実力値との乖離」が生まれてしまいます。
イノベーション:通過した後が大変になりますからね。言語化能力が低いままアイデアだけ良くても、推進できませんし。
遠藤:おっしゃるとおりです。自分の頭で考え、AIと壁打ちして言語化できるか。そこも含めての「スキル開発」だと捉えています。この点当社はDX推進部が積極的な施策を多く行っているので、AI活用スキルの高い方が非常に多いです。また、私たち運営チーム側のフィードバック業務にもAIを積極的に使っています。「このアイデアの市場規模は?」「類似事例は?」といった調査や、「ここが抜け漏れているよ」といった壁打ちは、AIが非常に得意とするところですから。
イノベーション:AIを「思考の代行」ではなく「壁打ち相手」として使う。そして運営チームはAIを使ってフィードバックのスピードと質を上げる。非常に理にかなった運用ですね。後編では、通過後の撤退プロセスや、人事部との連携、事業化事例などについて伺います。
