グローバルCVCの観点3:スタートアップのEXIT支援の考え方
3つ目の観点は「EXIT(出口戦略)支援」だ。IPOの基準が比較的緩く、EXITが多い日本と異なり、欧米ではM&AによるEXITが圧倒的に多いため、CVCも他社売却を含めた支援に積極的だ。親会社による買収を前提とせず、最も財務リターンが大きい売却先を優先する。親会社が買い手となる場合でも「情報隔壁」を設けて公平な入札を行い、最高値を提示した相手に売却してスタートアップの利益を最大化する姿勢を徹底する。
また、契約・交渉のプロとして起業家の経験不足を補い、複雑な契約条項への助言やデューデリジェンス資料の作成支援を行う。さらに数年前からコンプライアンスや管理体制を「大企業が買収・統合しやすい形」に整備するサポートも実施し、ビジネス成長支援と合わせて高い金額でのM&A成立を目指している。
親会社に限らない、売却ニーズの創出
A社CVCは「非戦略投資」を貫いているため、EXITにおいても親会社への売却を前提とせず、ファイナンシャルリターンが最大となる売却先を探索する。受け身ではなく、売却候補企業に対し「自社開発するよりこのスタートアップを買収すべき(Buy vs Build)」といった戦略的提案を行い、買収ニーズ自体を創出する点が特徴だ。加えて、交渉や外部監査への対応なども手厚くサポートする。
投資先スタートアップの出口戦略を支援する
B社CVCも同様に親会社に限定せず、リターン最大化を狙える売却先への支援を行う。顧客候補として関係構築を進めつつ、十分なリターンがあれば親会社の競合への売却にも反対しない。また、豊富なM&A EXIT経験を活かし、アーンアウト[1]などの複雑な契約条件についての助言や、投資銀行への紹介を行ってスタートアップの信用力を補完している。
本記事では欧米企業の先端CVCの取り組みを日本企業のCVCとの比較から解説した。これらの手法がすべてにおいて最適なわけではないが、違いを踏まえた上で、日本企業のCVCだからこそできる戦略や独自の強みを検討する必要があるだろう。本連載では今後、日本企業のCVCで先端的な取り組みを行う企業を取材し、グローバルなCVCの潮流を踏まえつつ、日本企業の成功パターンを探索していく。
[1]アーンアウト:M&A(企業の合併・買収)で買収代金の一部を、M&A実行後の一定期間に買収対象企業が特定の業績目標(売上、利益など)を達成した場合に後払いする仕組みのこと。
