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サービスデザインの時代

「Airbnb」がサービスデザイン的である理由

第1回

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 本連載では、いま世界で注目を集めている「サービスデザイン」の考え方を、日本のビジネスと対比させながら紹介していく。サービスデザインは、単なる新しいマーケティング手法に留まらず、企業や自治体などの組織のありかた、そして社会構造まで変革させるインパクトを持っている。サービスデザインとは、いわゆるサービス業だけでなく、すべてのビジネスパーソンにとって意識しておくべき考え方なのだ。  連載の第1回目となる今回は、先日開催された国際会議「Service Design Global Conference 2014」にて行われたAirbnbの基調講演の内容を紹介しながら、サービスデザインを紹介していこう。

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「Airbnb」がサービスデザイン的である理由

 去る2014年10月6日、7日、8日の3日間にわたり、スウェーデンのストックホルムにおいて、サービスデザインに関しての国際会議「Service Design Global Conference 2014」が開催された。

 世界中から600名の参加者を集めたこのカンファレンスの基調講演は、AirbnbのGlobal Head of Employee Experience(従業員経験担当グローバル統括担当)であるMark Levy氏によるもの。氏の講演は、Airbnbという新しい時代のサービスを紹介しながら、それを実現する組織の考え方を紹介するものであった。

 ご存知の方が多いと思うが、Airbnbは個人が自分の家や部屋を貸すことができるマーケットプレイス。ちょっとした滞在のホテルがわりから、リゾート地で数週間過ごすためのコテージまで、空いている家をシェアするというコンセプトが評価され、世界中で利用者が広がっている。ここでいう利用者とは単に宿泊施設を利用する宿泊者だけでなく、自分の家や部屋を貸し出すホストとしての参加者もさす。

Airbnb
 https://www.airbnb.jp/

 一般のホテルのような、いわゆる手厚いもてなしは特にいらないが、自炊できるキッチンがあって、ある程度安価に宿泊できる宿がほしい、という価値観を持つ人は多い。しかしながら、通常のホテルビジネスでは、ビジネスモデル的な制約から、価格を下げると設備費用も下げなければならなく、結果的にユースホステル的な方向性か、アメリカなどに多い、モーテル的なチープな感じのホテルかにならざるを得なかった。また、貸す側も、欧米では家のシェアがもともと普及していることもあり、バカンスで家を空けている期間を有効に活用したいという考えを持つ人は多かった。そういった人々のマッチングとしてAirbnbのモデルは成立している。

 Airbnbに部屋を提供する人は、もともと空き部屋にしていた部屋を使ってもらって収入が得られるわけであり、考え方によってはこれまで貸さなかったことが機会損失であるともいえる。もともと貸すための部屋を用意しているホテル業界と同等の価格をつける必要はない。そして、もともと自分が快適に過ごすために手をかけている部屋を貸すことになるため、提供される部屋のクオリティも決して低くはない。このため、結果的にAirbnbを使うことで安価でクオリティの高い部屋を使うことができるのである。

 また、結果的に提供されるものは部屋であるが、その部屋は現地での生活の延長であり、部屋を借りる側からすれば、そこは単に宿泊するだけの部屋ではなく異国の日常を経験できるものとなる。この点においてAirbnbに価値を感じる人も多い。

 このようにAirbnbには、新規ビジネス開発の観点において、サービスデザインを象徴するいくつかの側面が見て取れる。1つめは、「Airbnbが利用者の価値に着目をし、それをビジネス化している点」である。そして2つめは、この価値のビジネス化を考える際に、単に事業者が消費者になにかを提供する、という一方的な関係性を前提にせず、「社会全体の関係性(=生態系、エコシステム)を意識している点」である。日常の延長の旅をリーズナブルに経験したい層と、空けている家を人に貸してもよい層とのマッチングというAirbnbの行っているモデルは、もともと潜在的に需要と供給はあったわけだが、それをビジネスとして成立させる試行錯誤のプロセスがサービスデザイン的であるといえる。

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この記事の著者

長谷川 敦士(ハセガワ アツシ)

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