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IR起点の企業変革

東証「PBR1倍要請」は単なる数値目標じゃない。価値創造IRを実装し、投資家と企業の評価軸を同期せよ

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“経営機能”として価値創造IRを実装する

チェックリスト3|経営コミットメント

  • 投資家との対話が経営判断(戦略の修正や投資判断)に反映されている
  • 資本配分(投資・還元・内部留保)の考え方を明確に説明できる
  • 評価指標(PBR・ROICなど)を経営目標と結びつけている
  • IR担当者が経営会議に定常的に関与している  

 価値創造IR(IRX)が目指すゴールは、単なる「PBR1倍の達成」ではありません。それは、投資家との間に評価軸がそろった対話が維持され、企業価値に対して「適正な評価が継続する状態」を構築することです。

 これを実現するためには、IR部門の役割を再定義する必要があります。IRを広報的な「周辺業務」ではなく、市場の声を経営戦略に反映させる「経営の中核機能」として位置づけることが、今後はより重要になると考えられます。

 その実践には、経営陣それぞれが求められる役割分担を明確にすることが重要です。CEOには、企業の目的地(北極星)と、そこに至る成長戦略の因果関係を自らの言葉で語る役割があります。CFOは、中長期的なキャッシュフロー創出計画と、それを支える規律ある資本配分方針を明確にします。そしてIR担当は、市場の評価軸や投資家の視点を正確に翻訳し、経営判断に接続する橋渡し役を担います。

 現在の上場企業にとって、東証改革やPBR対応は一見すると重い負担(コスト)に感じられるかもしれません。しかし、これは自社の立ち位置を客観的に見つめ直し、事業全体を構造的に刷新して、企業価値の再設計を行う絶好のチャンスです。

経営者に求められる「資本市場との対話」

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 このチャンスを生かすためには、経営者が以下の4つを意識して行動することが、変革への第一歩となります。

 1つ目は客観的な自己認識。「自分の会社は自分が一番よくわかっている」という認識に甘んじず、「マーケットの中で、客観的にどう見られているか」という視点をしっかりと認識することです。

 2つ目は市場とのギャップの解消です。客観的な評価と自社の認識とのギャップを埋めることが、企業価値向上につながっていきます。

 3つ目は、東証改革を全社的な見直しの機会と捉えることです。東証改革は、単に市場の要件を満たすためのものではありません。現在の立ち位置を改めて見つめ直し、人的資本への適切な投資やDXへの取り組み、収益性の改善など、足元の事業全体を構造的に見直す絶好の機会なのです。

 4つ目は継続的な対話です。投資家が重視するポイントは会社ごとに異なります。形式的に評価軸を開発するだけでなく、対話を通じてそのポイントを把握し、全社的なコミュニケーションを取りながら価値を上げていく取り組みを始めるなら、今が絶好のチャンスとなります。

 価値創造IRとは、資本市場との「対話」を通じて自らの価値を再設計するプロセスそのものです。市場の視点を取り入れ、成長戦略、KPI、資本配分を一貫したストーリーとして磨き上げること。その真摯な姿勢は、投資家の信頼を勝ち取り、持続的な企業価値向上を実現するための道となるはずです。

 IRの変革は、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。時には市場からの厳しい評価に直面することもあるでしょう。価値創造IR(IRX)は、市場と共に企業の未来を創り上げていくための挑戦です。この記事をきっかけに、投資家との間に新しい対話が生まれ、企業価値のさらなる向上につながれば幸いです。

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この記事の著者

礒野 慎司(イソノ シンジ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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