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川邊健太郎氏と安宅和人氏が語るAI時代の生存戦略──奪われない価値は「主語」と「一回性」に宿る

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AIに奪われない人間の価値は? 安宅和人が明かす「2つの軸」 

今田:クリエイターの方々もAIの台頭を恐れていますが、世の中に溢れる平均的なコンテンツはAIに代替されても、本当に尖った一握りの作品は特別な人間でないと生み出せないと感じます。「AIに奪われない人間の価値」はどこにあるのでしょうか。

安宅:そのとおりで、クリエイターの世界でも独自のスタイルや「文体」がないと生き残れませんし、ディレクションもできません。人間の価値について考える際、「AIにできる/できない」で限定することにはあまり意味がありません。本質的な軸は、「ある特定の人がやっていることに価値がある世界(主語に意味がある)」と「一回きりであること(一回性)」の掛け算です。この領域は、デジタルに閉じる理由がまったくありません。

 たとえば、素晴らしい天ぷら屋の店主が、目の前のお客様一人ひとりの様子やタイミングを見計らって最高の瞬間に天ぷらを提供する。その一瞬の体験を磨き上げていることに価値があり、仮にロボットがまったく同じ動作をしても価値は生まれません。藤井聡太先生の将棋や、その場の間合いに依存する「お笑い」、あるいは生のイベントも同様です。

 逆に、「誰がやっても同じもの」や「再現性が効くもの(デジタルマーケティングなど)」は、究極的にデジタルへと閉じていきます。フィジカルAIの進化によってデジタルに閉じる領域は広がりますが、一回性が高く主語に価値がある領域は残り続けます。デジタルに閉じる領域はプラットフォーム化し、人間の役割はディレクションとダメ出しのみになるというのが私の見解です。

安宅氏がセッション中にホワイトボードに描いている様子。縦軸に「その人にできる意味がある」と「誰がやっても同じ」、横軸に「何回もくりかえされる世界」と「一回性に価値」を配置し、「デジタルに閉じる領域」との境界構造を示している
安宅氏がセッション中にホワイトボードに描いている様子。縦軸に「その人にできる意味がある」と「誰がやっても同じ」、横軸に「何回もくりかえされる世界」と「一回性に価値」を配置し、「デジタルに閉じる領域」との境界構造を示している
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「しごでき」より「人気者」へ。川邊氏が語るストーリーの価値

川邊:私からも関連したテーマとして、最近「しごでき(仕事ができる)から人気者へ」というコンセプトを掲げています。ITが発達してからの30年間は知識集約型産業の時代であり、最も重要なのは「頭脳で仕事ができること」でした。しかし、その能力はAIによって高度に平準化されるため、相対的に価値が下がっていきます。

 では何が差を生むのかというと、「やっている人が魅力的か、人気者かどうか」という人間性です。たとえば、AIを使えば要件どおりのサービスを誰でも一瞬で作れる時代です。機能的な差がなくなったとき、「川邊がこういう背景や想いで作ったサービス」と「ブランドのないA社が作ったサービス」のどちらを選ぶかといえば、前者が選ばれるようになります。奪われない価値は人間そのものやストーリー(語り)に宿るのです。

今田:個性がより重要になり、「個」が立っていなければならない時代ですね。

川邊:ユーティリティの領域でも、極めてパーソナルな動機に基づくサービス開発が強みを持ちます。たとえばZOZOの社外取締役である閑歳孝子さんは、自宅の玄関にカメラを置き、出かける際の一瞬の服装を記録して「買った服の減価償却率やメルカリでの残存価値」を可視化する自分専用のサービスを作って楽しんでいるそうです。一般的なコーディネート提案ではなく、「自分が買った服をどれだけ着て得したかを知りたい」という個人の強烈なニーズと偏愛で作られたツールです。「閑歳さんがその動機で作ったのなら共感できる」と他の人も使いたくなる。優れた機能すらAIがすぐに模倣できる時代だからこそ、開発者の「背景の語り」やストーリーへの共感が、選ばれる決定打になるのです。

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「作る」よりも「消費する」。希少性が逆転する時代の時間術

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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