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川邊健太郎氏と安宅和人氏が語るAI時代の生存戦略──奪われない価値は「主語」と「一回性」に宿る

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「作る」よりも「消費する」。希少性が逆転する時代の時間術

今田:次のテーマとして「AIの活用によって生み出される時間の余白をどう使うか」について伺います。

川邊:私自身の業務もAIで大幅に効率化されていますが、その余白を惜しみなく投下しているのが「推し活」です。幸福度も増すので絶対におすすめです。これをビジネス的に解釈すると、生成AIによって「コンテンツを作る側」は無限の生産力を手に入れます。しかし、それを「楽しむ側・消費する側」の人間とその可処分時間は有限です。供給過多の時代においては、実は「楽しむ側の価値の方が高い」という希少性の逆転が起きます。いかに楽しむ側、推し活側に回り、AIで浮いた時間を自分の好きな対象に注ぎ込むかが重要です。ただコンサートに行っているだけなのに、日経新聞の記事に私のエピソードが取り上げられるほどです。個人の熱狂がそのまま価値につながる時代なのです。

安宅:素晴らしい視点です。生の体験を味わうことに時間を投資し続けると、川邊さんのようにその分野の「目利き力」がトップレベルに達します。結果として「川邊さんによるディレクション」の価値が爆発的に高まる。推し活の対象は人が作った生々しいものであり、それを見出す能力は極めて重要です。

 一方で「仕事が減って労働時間が短縮されるべきだ」という議論には少し違和感があります。移動速度が江戸時代から何百倍になっても人間が移動に使う時間が変わらないのと同じで、効率化で浮いた時間は別の活動やより大きな挑戦に充てられるはずです。人間は仕事を通じて社会の役に立つことに実感を得る生き物ですから。ただ、私自身のキャリアを振り返っても、本業以外の課外活動に情熱を注いだ結果、そこから圧倒的な引き合いや新しい仕事が生まれました。個人も企業も、本業以外のところに3〜4割の「遊びや熱狂」をインベストしていないと、未来は萎んでいくと思います。

AIと人間の二層構造へ。未来を拓くカギは「脱ムッツリ」

今田:フィジカルな領域においても、やはりロボットではなく人にサーブしてもらう食事の美味しさや、対面での温かみといった価値は残り続けると感じます。最後にセッションのまとめをお願いします。

株式会社メディアジーン 代表取締役 CEO 今田素子氏
株式会社メディアジーン 代表取締役 CEO 今田素子氏

川邊:サービスを提供する側にとことんこだわるのは、これからの時代きつい生き方になるかもしれません。私は「提供側はすべてAIに任せ、自分は楽しむ側の人間になる」とポジションを決めているため非常にストレスフリーです。今後の企業経営は、ベースとなる事業運営や競合監視・模倣展開を「全自動のAI」が担う層と、人間たちがひたすら新しいインサイトを考えて「楽しい!」と盛り上がる層の二層構造に分かれていくでしょう。過度に恐れる必要はありません。

安宅:そのとおりで、進化の鍵は「閉じない世界(人間性が価値を持つ領域)」で得た生のインサイトを、「閉じる世界(自動化された領域)」にいかに持ち込めるかです。それができなければ、社会は単なる最適化ゲームに陥り、似たようなものばかりになって崩壊してしまいます。ホワイトボードにも描きましたが、人間が単なるプラットフォームやクラウドに対する方向付け(ディレクション)やダメ出しを行うだけの存在になり、本質的な「主語」や「語り」のインサイトを失うべきではありません。

今田:人間性に価値がある領域を強化するためには、何が必要でしょうか。

安宅:その人である意味があり、一回性に価値のある領域に対して、狂ったように時間を投下することです。

川邊:それは日本人が少し苦手とするところかもしれません。内に秘めて「実は好きでした」という「むっつり好き」が多いですから。これからは堂々とオープンに発信して、つながりを増やしていくモードチェンジが必要です。

安宅:ホワイトボードの最後にも強く掲げたとおり、ぜひ「脱ムッツリ!」でいきましょう。

川邊:「オープンな好き」で未来を切り拓いていきましょう。

今田:本日は白熱した議論をありがとうございました。

安宅氏がセッション中に描いたホワイトボード
安宅氏がセッション中に描いたホワイトボード

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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