個人のアタマの中にあるプロセスをサービスとして標準化する
企業の情報システム「システム所有」から「ITサービス利用」に移り変わりつつある。ポイントとなるのがITをサービスとして捉え、その品質向上を図る「ITサービスマネジメント」という考え方だ。ではITにとっての「品質」とは何か。野村総合研究所の榮 秀樹氏はこう語る。
たとえばITでインシデントというものがあります。インシデントといえば通常、障害と同義と思われていますが、ISO20000に基づく我々の考え方は違います。顧客からの問い合わせや会議、監査での指摘事項などサービスレスポンス低下につながる事象を広くインシデントととらえています。そのインシデント事象が発生したら着実に起票し、標準化した管理フローに基づいて本質的な対応を行うのです。
こうしたプロセスの導入がITサービスマネジメント品質向上の一例になる。そのサポートをするのが、野村総合研究所が自社の取り組みから生み出した「CSI(継続的改善)支援サービス」だ。このサービスを開発し、展開したクラウドサービス本部は、顧客や自社システム事業部門への各種クラウドサービス提供をコアミッションとしている本部になる。基盤サービス本部を母体に約2年前に設立され、基本的にシステム・エンジニアで構成された技術チームだ。
技術スキルが高く、馬力もあるメンバーが揃っているがゆえに、プロセスが個人の頭の中にあり、「臨機応変に何でもやる」という風潮があった。一方、野村総合研究所で進められているオンプレミスからクラウドへの移行により今後、維持管理対象のサーバーが増えていく。属人化している状態では、運用負荷がどんどん上がっていく。その対応のため、人を増やさなくてはならないし、スピードも遅くなるというリスクを感じていた。 またクラウドサービス本部ができる前は受託型で、顧客個々にサーバーを建て、それぞれのやり方で運用するというスタイルだった。しかしクラウドになってくると「サービスとしてインフラを提供していく」という方向に舵を切ることになる。
その意味でも各チームのやり方がバラバラで、属人化していてはいけません。そこで中長期ロードマップを作成し、改善プロジェクトを立ち上げることにしました。(榮氏)